【第6回】 特養の非常勤介護職員Nさん ~変わらぬ日々~
業務内容を変更して一か月ほど経った頃、Nさんは清掃にもすっかり慣れて元々のユニット内だけでなく施設全体の清掃を行うことができるまでになっていました。相変わらず前日に清掃したばかりのところを再び掃除していたり、用具を片付ける場所がわからなくなったりしていましたが、周りもフォローすることにすっかり慣れていたのでNさんが困ることはないようでした。 最初に相談してくれたYさんも、そんなNさんを見て安心したようでした。「ありがとうございました。私、相談した頃すごく心配で…。Nさんは利用者さんのことすご ...
【第5回】 特養の非常勤介護職員Nさん ~「変化」させないこと~
そして、Nさんご本人には施設長から伝えられました。認知症については触れず、年齢的なことも考えると介護業務ではなく今後は清掃をお願いしたいとお話したようです。Nさんはいつもの様子で、「私にできることならなんでもやりますよ。」と快諾してくれたということでした。もしかすると、自身の変化に戸惑いながらご自分でも今後仕事を続けられるか不安だったのかもしれないなと感じました。 認知症には「変化」が悪影響を及ぼします。私がNさんを退職させたくなかったのは、それも大きな理由の一つでした。週4日施設で仕事をし ...
【第4回】 特養の非常勤介護職員Nさん ~退職するしか道はないのか~
ほんの一週間ほどNさんの行動記録をつけていただけですが、このような言動がいくつも見受けられました。Yさんの報告通り、もうこれまでのようにユニット介護を1人で任せることはできません。しかし、私はこれを理由に辞めてもらうということにも気が進まず、やりきれない思いでした。Nさんの仕事ぶりは今までずっと見てきたため、とても真面目でこの仕事や利用者さんと関わることが好きであることはよくわかっていました。 「どうにかならないでしょうか?退職以外の道を…」上司に今後のNさんの処遇について相談しました。普通 ...
【第3回】 特養の非常勤介護職員Nさん ~Nさんを注視していると~
Yさんからの情報を受けて、私はまず介護主任へ話をしました。Yさんの話の通り、勤務の日ではないのに施設へ来たことがあったということでした。介護主任もそのときはおかしいなと思ったものの、大したことだとは受け止めていないようでした。 そして上司へも報告し、気を付けて様子を見るように指示を受けました。まずは事実確認をしなければ今後どう対処するのか決めることができないからです。その日からNさんの行動を記録するようにしました。すると、Yさんの話が決して大袈裟ではないことがすぐにわかってきました。 &nb ...
【第2回】 特養の非常勤介護職員Nさん ~Nさんの変化~
「えっと、具体的に教えてくれる?どうしてYさんはそう思うの?私から見たらNさんは今までと変わらないように思うんだけど。」と聞くと、Yさんは最近のNさんについて詳しく話してくれました。 「この間、出勤日じゃないのに施設に来たんです。それで、どうしたんですか?って聞いたら、『主任から今日出てくれって言われて』って言うんです。でもそんな連絡はなかったし、主任に確認したらそんなことはお願いしていないって。Nさん、おかしいなぁって言いながらそのときは帰っていったんですけど…日付けを間違ったとかならわかるんですけど、 ...
【第1回】 特養の非常勤介護職員Nさん ~Yさんからの相談~
私が特養に相談員として勤務していた頃、Nさんという非常勤の介護職員の方がいました。69歳の女性で、入職して4年ほど経つ方でした。常勤職員と同様に、10人の利用者を1人で見るユニット介護を任されていました。 いつも元気で明るく、利用者さんからも職員からも好かれていました。介護に関する資格は何も持っていませんでしたが、現場で身につけた介護技術は確かなものでした。観察の目も鋭く、利用者の異変を早期に発見することも多々あり、他職種の職員からも信頼されていました。利用者さんの話にワッハッハと豪快に笑う ...
【小説風事例紹介】子育てママのご褒美メイク
1.サロンで出会ったYさん親子 私の勤める社会福祉協議会には、子育てサロンというものがあります。親子で利用することの出来る場所で、元々公民館として使われていた部屋を遊び場として開放しているのです。遊具や本、おもちゃなどがあり、子供を遊ばせるだけでなく、同じように子育て中の親同士が交流を持てる場所にもなっています。 この週3回開所しているサロンでは、地域のボランティアさんがスタッフとして活動してくださっています。利用するのは概ね0~3歳ほどの子供を育てているママさんたちで、お友達 ...
【第7回】在宅生活不可能となり緊急入所したご夫妻 ~今まで通り仲良く~
それから、双方の施設が空くのを待ってTさんとSさんがそれぞれケアハウスとグループホームに入所しました。私はその後も度々様子を見に行ったり職員から話を聞いたりしていましたが、ご夫妻は毎日のように互いの部屋を行き来し、今まで通り仲良く暮らしているようでした。実際に入所した後も、自宅へ帰りたいという思いが再燃することはないようでした。 そして、たまにショートステイに二人で遊びに来てくれることもありました。そんなときには、足が悪いTさんが乗った車椅子をSさんが押してきました。「お元気そうですね、こち ...
【第6回】在宅生活不可能となり緊急入所したご夫妻 ~夫婦の生活を今後どうしていくか~
私は同じ敷地内にあるグループホームとケアハウスを当たってみることにしました。私の勤務先は複合施設であり、同じ敷地内に特養・ショートステイ・グループホーム・ケアハウス・デイサービスを併設していました。そして、グループホームとケアハウスに1部屋ずつ空きそうな居室があるという返答がありました。A夫妻の話をしたところ、入所の方向で進められそうな手応えがありました。 同じ施設に入所することがご夫妻の希望でしたが、Sさんの認知症はショートステイに入所してからますます進行しているようでした。急激に環境が変化したことが原 ...
【オススメ度★★】リーディングス日本の社会福祉(第1巻) 社会福祉とはなにか
この参考書の特徴 大河内一男、孝橋正一、中村優一、一番ケ瀬康子、古川孝順など社会福祉士試験においても頻出する先生方の論文を収めた一冊です。 ここがイイネ 「社会福祉とは何か」と考える機会は、試験勉強という意味では少ないと思います。 同じく〇〇理論と呼ばれる中身を学習することも少ないと思います。 その両方を充足する一冊です。 先生方の論文がそのまま載っていますので、どのような時代背景があって、どのような思いを持って社会福祉を考えていたのかわかるようになっています。 この一冊を読む ...



