試験対策

【社会福祉士】メアリー・リッチモンド ケースワークの母

社会福祉士の試験において、「ケースワークの母」として呼ばれるメアリー・リッチモンドは最頻出人物であり、受験に当たって覚えていない人はまずいないと思います。しかし、どのような人だったのか知っている人は少ないはずです。名前の丸暗記では、なく人柄も知って学習を深めておきましょう。

メアリー・リッチモンド(Mary Richmond)

アメリカ合衆国 イリノイ州生まれ 1861ー1928

 

「社会福祉士」に関するオススメ本

【実務未経験者必見】社会福祉士の仕事ってこんな感じなんです。総集編

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リッチモンドの人生

祖母に育てられた幼少期

南北戦争の始まった1861年にイリノイ州ベルヴィルに生まれました。しかし3歳の時に母親と死別し、育児に関心がなかった鍛冶屋の父親に代わって母方の祖母がリッチモンドの養育を引き受けることになりました。

 

祖母は、メリーランド州ボルティモアの中流下層の地域社会で貸間業を営んでいましたが、裕福な生活を送る余裕はありませんでした。当時のアメリカは義務教育がなく、リッチモンドも11歳まで祖母の方針により学校教育を受けず、自宅で祖母や叔母、知人などから書籍を手当たり次第に読むというやり方により、読み書きを習得していきました。その後、16歳でボルティモア東女子高校を卒業し、彼女の希望であった教職へ就こうしますが、当時の社会は縁故が必要でありその道には進めませんでした。

 

慈善組織協会(COS)との出会い

そのため、工場勤務、出版社の書記、文房具店やホテルの経理を転々として十数年の歳月を送った。その間には、リッチモンドは深い孤独感を感じ、健康にも不安を感じるほどであった。

 

1889年、ボルティモア慈善組織協会の広告が舞い込み、それに応募して会計補佐の職に就きました。2年後には事務局長の役職を得るほどの能力を発揮しました。また、1900年にはフィラデルフィア慈善組織協会が組織再建に向けてリッチモンドを事務局長に呼び寄せました。そして、1909年には、ラッセルセイジ財団が慈善組織部を設置したのを機に部長の任に就きました。この慈善組織部部長は,全国のCOSの指導を様々な調査研究の企画とその成果に基づいて行うことが仕事でした。

 

リッチモンドは、研究者と観察者としての資質とすばやい状況判断により活動を進めて行く活力と能力とを兼ねそろえており、いつもわかりやすい例えを用いながら熱意と確信を持って語ることができる人をひきつける魅力を持った人物でした。

 

ソーシャルワークは専門職か?

ソーシャルワークの専門職化の勢いが強まったのは1915年の全米慈善矯正会議でソーシャルワークは専門職かと題するフレックスナーの講演からでした。フレックスナーはカーネギー財団の命を受け、アメリカとカナダにおける医師養成の教育機関の実態調査を行った上で、医師の養成課程の改革を提言し科学的な近代医療を実現させた人物です。

 

フレックスナーの講演では専門職の要件として、6つの事柄を示しました。

1.高度に個人的な責任を伴う知的操作を行うこと

2.科学や学問に裏付けを持った活動であること

3.実践的でかつ限定的な目的に科学や学問を応用する活動であること

4.教育課程のなかで伝達可能な技術を保有すること

5.専門職団体を自律的に組織する性格があること

6.利他主義的な動機を鼓舞する傾向にあること

 

ソーシャルワークは科学的な要素が未発達であるということで、ソーシャルワークを専門職と呼ぶのは不可能であるとしました。

 

その後、リッチモンドは、1917年に出版された「社会的診断論」でケースワークを科学的な実践方法として体系づけ、慈善団体や個人にカンや経験に基づいた援助による慈善事業の一つとして捉えられていたケースワークを専門職として位置付けました。

 

また、1922年に執筆した「ソーシャルケースワークとは何か?」ではケースワークの定義を明確化し、その後のケースワークの発達の基礎となった。理論としてはフロイトの精神分析を積極的に取り入れられたが、後の診断主義とは異なることに注意。

 

参考文献:日根野 建「米国ソーシャルワークの専門化と史的論点 M.E. Richmondの針路を巡って」

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