社会福祉士の現場実習では、毎日の実習記録をしっかりと書くことが重要な学びの一環です。体力的にもハードな一日が終わった後に記録を書くのは負担に感じるかもしれませんが、実習評価はこの記録も含まれています。実習記録は、学びを深めるためにも欠かせないものです。
この記事では、なぜ実習記録が大切なのか、その「意義」を解説するとともに、スムーズに記録を進めるための6つのコツを紹介します。これを押さえれば、社会福祉士実習における記録の書き方がより明確になるでしょう。
記録の意義
多くの場合には、養成学校で実習記録の書き方について学ぶでしょう。しかし、実際には日々記録を書く中で、実習生は実習中に少しずつ力を付けて行くことができます。
一方、実習担当職員は、その進歩を感じて嬉しく思うでしょう。
記録を通して、実習担当職員と実習生が相互に目標や課題に取り組むためのツールになります。実習担当職員は記録を見て実習内容を変更することもできるので、実習生がどのようなことを行いたいか把握するためにも利用されます。また、実習生は自分がどれくらい理解できたか確認できますし、後で読み返すと自分の成長を実感することもできます。
このようなことから実習の記録はとても重要な存在なのです。
書き方のコツ① 目標や課題に沿って書く
日々の目標や課題は前日に決めておきます。それを元に実習を行い、その内容を記録としてまとめると良いでしょう。
目標や課題が定まっていなければ、記録の焦点も定まらず一日の学びを深く掘り下げて書くことができません。また文章にまとまりがなく何を学んだのか読み手(養成学校の先生や実習担当職員等)に伝わりづらくなってしまうのです。
以下のような目標を定めると良いでしょう。
〇〇施設における日課と職員の業務を理解する
社会福祉士としての相談援助技術について学ぶ
利用者の現状を理解し、援助関係の在り方を学ぶ
社会福祉協議会:地域課題の把握と地域住民への働きかけについて学ぶ
社会福祉協議会:福祉教育の目的と生活福祉資金貸付制度について学ぶ
社会福祉協議会:日常生活自立支援事業について学ぶ
書き方のコツ② 全てのことを書こうと思わない
一日の実習時間はとても長く、充実した時間になることでしょう。しかし、その日に経験した全てのことを書く必要はありません。実習記録は日記ではなく、そこには必ず観察や考察が入らなければならないのです。
一日の中で深く学べたことがあれば、一点ついて書いただけでも大丈夫です。しかしそこには観察や考察を入れて、最終的にどのような学びがあったのかを書くようにしましょう。どうしても書きたい出来事が複数ある場合には、最大でも3項目ほどまでにしておきましょう。
そのため、日記のように出来事だけを長々と書くのはNGです。
書き方のコツ③ 5W2Hで記録を書く
記録を書く上で5W2Hはとても大切です。5Wは、いつ、どこで、だれが、何を、何のためにを指します。2Hは、どれくらい、いくらで、を指します。
この5W2Hを意識して書くことによって、より客観的な事実を書き込むことができるのです。また、その事実に対して考察を書きやすくなります。勿論、文字数も多くなり読み手の理解も深まるので、結果的にどれだけ学べたかがしっかり記録に残るようになるのです。
書き方のコツ④ テキストを十分活用して書く
社会福祉士のテキストや書籍を活用して書くと充実した記録になります。実施・体験等を考察して書きますが、その考察の内容にテキストを活用するのです。
例えば、実習担当職員が面接している様子を見学したとします。
●『ラポール』は形成されているのか?
●『自己覚知』を意識されたものなのか?
●『守秘義務』は守られているのか?
●『面接の技法(感情の反映や明確化など)』を利用しているか?
●バイスティックの7原則を用いられているか?
など、専門用語を紐解きながら、考察していくと書きやすくなります。
具体的には…
『職員さんの面接に同行させていただき、見学を行った。利用者(クライエント)が話す内容について抱えている感情を、職員さんが言葉に言い表す「表情の反映」を活用していた。また、話の合間に短い感想や共感を示す言葉を返し、利用者が話しやすくなる姿勢を示していた。他にも、面接の技法はいくつかあるので、また面接している機会があれば、どのような技法を使っているか観察・考察していきたい」
などと表現します。
書き方のコツ⑤ 課題や目標は一日で達成できないことも…!?
一つの課題や目標について、その日に達成できないこともあるでしょう。そのような場合には、翌日にその課題等を持ちこしても構いません。
例えば…
『今日は〇〇の理解が難しかった、その原因は△△にあると考えている。』と書いてその日の記録を終えたとします。次の記録では、『昨日、○○について理解ができなかったので、自分なりに考えた理由である△△を念頭に置いて実習に取り組んだ・・・』と日をまたいで課題等の達成に向けて何をしたかなどを書いても構わないのです。
書き方のコツ⑥ 事実及び理解・考察を書く
体験・見学・指導などの事柄と、それらの理解と考察が書かれているかを確認しましょう。記録が、事実の羅列だけになるのはNGです。また、主観的な記述になっていないか注意する必要もあります。
これらのコツを踏まえた例文
実習先:地域包括支援センター
本日の目標:社会福祉士としての相談援助技術について学ぶ
本日の目標である「社会福祉士としての相談援助技術について学ぶ」に関して、特に学びが得られたオリエンテーションと高齢者実態把握調査の2つを本記録の焦点とする。
まず、オリエンテーションでは地域包括支援センターの役割や、地域ネットワークの形成の必要性、多職種連携の重要性について学ぶことができた。特に地域包括支援センターでは主任介護支援専門員、看護師・保健師、社会福祉士の専門職が連携することによって、それぞれの専門分野から対象者をアセスメントし、より必要なサービスへとつなげていくことが大切だということが分かった。
次に高齢者実態把握調査では、通常の相談支援業務とは異なりアポイントを取ることなく突然訪問して聞き取り調査を行うため、ラポール形成の難しさを感じた。一度きりではなく年に数回追跡調査をしている方にはすんなりと答えて頂けたが、初めて会うことができた方や認知症状のある高齢者は猜疑心が強く、社会福祉士としての技量が試される。同行した社会福祉士の職員を観察していると、話すスピードや傾聴する姿勢、共感をもって相手の信頼を得ており、ラポール形成の場面を勉強することができた。またラポールを形成することによって、その方の困りごとや潜在するニーズを発掘し、そこで初めて必要なサービスや情報提供を行うことができるということが分かった。情報提供をその場でスムーズに行うことになるため、地域包括支援センターの社会福祉士はフォーマルサービスだけでなく、インフォーマルサービスの情報も常に頭の中に入れておくことも大切だということを痛感した。情報提供がスムーズであることも、信頼を得るためには必要である。
また、原則全戸訪問の高齢者実態把握は、地域包括支援センターにとって地域介入する際の大きな武器であり、高齢者虐待の把握の際にも使用される。高齢者実態把握は相談したくてもできない方や、自身の問題や課題を認識できずにSOSを出すことができない方に対して、声なき声を広い、危機的な状況に陥る前のサイン拾うために大切だということを学んだ。
ここがポイント
・事実だけでなく、自身が観察して気づいたことを記載できている点が良い。
・社会福祉士の実習らしく、ラポール形成やニーズの発掘、フォーマルサービス、インフォーマルサービスなど専門用語を用いている点がなお良い。
・体験したことに加えて、別の視点からも高齢者実態把握の有用な点を述べており、深く学びが得られていることをアピールできている。
おわりに
一日の実習を終えて、自分なりに学びがあったと思っていても、それを文章にして残さなければその場限りの自己満足になってしまいます。日々実習記録を書くことのよって、自分は何を学んだのか具体的に整理ができますし、新しい課題が見つかったりもします。新しい課題が見つかると、更に学びを深めるチャンスとなるのです。
今回はお伝えした6つの書き方のコツを参考に、充実した記録にして下さい。
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