satoon

その他

2018/6/27

【第2回】特養から自宅復帰を果たしたKさんとそのご主人 ~日に日に不穏に~

「ねぇ、私が帰る日はいつなの?予定があるでしょ、見せてよ。」Kさんはこう言って毎日のように職員に詰め寄るようになりました。あまり良いこととは言えませんが、認知症の方であればこのような質問はいくらでもごまかすことができてしまいます。翌日になればこちらの答えたことは忘れてしまう人も多いからです。しかしKさんは違います。記憶も持続するため、適当に答えるわけにはいきませんでした。   相談員を通じてご主人へKさんが特養をショートステイと思っているようだという話をしたところ、驚くべき答えが返ってきました。 ...

社会福祉士コラム

2022/2/17

【小説風事例紹介】特養から自宅復帰を果たしたKさんとそのご主人

1.新しく入所してきたKさん 私は福祉とは全く無縁の4年制大学を卒業後、1年専門学校に通ってから国家試験を受け、社会福祉士を取得しました。そしてその後介護職員として特養に入職します。学生の頃より私は地域福祉に関心があり、将来的にはその道で働くことを志していました。しかし、高齢者分野にも強く関心を持っていたため、一生福祉の仕事をしていく上で若いうちに現場を知っておきたいという思いがあり、まずは施設への就職を選びました。介護職員、相談員を経て現在は転職し、社会福祉協議会に勤めています。この話は、私がまだ介護職 ...

その他

2018/6/27

【第7回】妻のネグレクトにより寝たきり状態であったHさん ~生まれ変わったHさん~

そして無事に本利用が終わり、Hさんは自宅へ帰っていかれました。奥様も「お蔭さまでハワイ楽しかったです。」と笑顔でした。私はHさんの利用中の様子と共に、歩行状態の変化を奥様とMさんにお伝えしました。   Mさんからは、驚きの声がありました。「すごいですね、日常的に歩くようにすればまだまだ歩行状態を落とす段階ではないということですね。」と喜んでおられました。そして、Hさんが言っていた通り翌週からデイサービスに週三回通い始めるということでした。   その後、Hさんはショートステイにも月に一回 ...

その他

2018/6/27

【第6回】 妻のネグレクトにより寝たきり状態であったHさん ~社会的な関わり~

海外旅行の期間は一週間。Hさんにとって自宅以外で一週間過ごすのは初めてということでした。しかしショートステイに到着したHさんに不安そうな様子はなく、「久しぶり」と私や他の職員に声をかけてくれました。   そして、前回利用時と変わらぬ様子で過ごされました。食事のときには必ず部屋から出てこられ、夜眠るとき以外はほとんど食堂やソファで他の方々と同じ時間を過ごしました。レクリエーションにも意欲的に参加してくれました。一週間の間にお友達を作り、その方と笑顔で話す姿も見ることができました。   「 ...

その他

2018/6/27

【第5回】妻のネグレクトにより寝たきり状態であったHさん ~初回利用を終えて~

高齢になると、1か月や2か月歩かなければすぐに歩けなくなってしまいます。Hさんの歩行状態低下は間違いなく寝たきりの生活が原因と思われました。歩行状態を低下させるような大怪我や入院歴はありませんでした。それ以外の身体的な能力低下もほとんどありません。入浴時にも自分で身体を洗うことができます。   初めてのショートステイ利用を終え、Hさんは自宅へ戻りました。利用時の様子を奥様へも伝えると、驚いた様子でした。「楽しそうにしていたんですか…、家では寝てばかりなのに。そうですか。じゃあ旅行のときも一週間と ...

その他

2018/6/27

【第4回】妻のネグレクトにより寝たきり状態であったHさん ~本来のHさん~

Hさんのショートステイ二日目に、レクリエーションに誘いました。正直言って、お断りされてしまうかなとも思っていました。周りの人と一緒にゲームで盛り上がる姿は想像できなかったからです。しかし、その予想は見事に裏切られました。   風船ボールリレーというものを行いました。利用者の方に一列に並んでもらい、風船を両手で持って上にあげたまま後ろの人にリレーしていくゲームです。途中で落としてしまわないように声をかけながら運びます。Hさんをお誘いすると、少しはにかんだ表情で「できるかね。」と笑いながら参加の意思 ...

その他

2018/6/27

【第3回】妻のネグレクトにより寝たきり状態であったHさん ~初めてのショートステイ~

そして、Hさんの初利用の日が来ました。初回のため一泊二日のみの利用です。時間通りにお迎えにあがり、施設に到着しました。Hさんのために用意した居室へ案内し、介護職員に任せて私はその場を離れました。 担当介護職員へは、Hさんのこれまでの生活状況や家族の様子などを事細かく伝えてあります。自宅では自分でトイレに行っているが、歩行状態はかなり不安定で転倒も何度かしている様子であることから、必ず付き添いをするよう指示を出しました。また、ショートステイではそれぞれの利用者に個室を用意していましたが、基本的に食事は食堂で ...

その他

2018/6/27

【第2回】妻のネグレクトにより寝たきり状態であったHさん ~妻の無関心~

妻は同じ家にいて、ドーンという大きな音を聞いて夫が転倒したようだというところまでわかっていながら、様子を見にも行かないということでした。いろいろな利用者さんやご家族にお会いしていますが、このような方は初めてだったため、正直言って驚きました。 食事はコンビニなどで妻が買ってきたものを夫の部屋のテーブルに置いておくといつの間にか食べているようだという話でした。三食ともそのように済ませており、また、Hさんは食が細いとのことでした。そういった話を裏付けるかのように、Hさんはガリガリに痩せていました。   ...

社会福祉士コラム

2022/2/17

【小説風事例紹介】妻のネグレクトにより寝たきり状態であったHさん

1.Hさんとの出会い Hさんと出会ったのは私がショートステイの相談員として働いていた頃でした。ショートステイとは、普段自宅で生活されている方が様々な理由で一時的に宿泊するサービスのことです。家族の介護負担を軽減するためであったり、外出等により介護することができない場合などに利用されます。   Hさんに関してはショートステイ利用希望の75歳男性、と事前に担当ケアマネージャーMさんより話を聞いていました。妻と娘の三人暮らしですが、娘は働いているため日中は妻と二人きりの時間が長いようでした。歩けないわ ...

その他

2022/2/17

【第7回】温かい雰囲気の中で死を迎えることを選んだYさん ~最期の時間~

それから、Yさんはとても静かで穏やかな日々を送りました。その期間はたった6日間でした。点滴を抜き、栄養・水分共にゼロの状態で6日間生きました。喉が渇いたときには、大好きなオレンジジュースを数滴舐めるように飲みました。6日間の中でYさんが口にしたものはそれだけでした。  介護職員は、とにかくまめにYさんの部屋を訪れ、声をかけることを徹底していました。Yさんは誰かが来ると嬉しそうに笑ってくれました。息子さんも奥様も、毎日施設を訪れました。日中はYさんと共に過ごし、夕方には「また明日ね。」と帰っていきました。 ...