【第7回】温かい雰囲気の中で死を迎えることを選んだYさん ~最期の時間~
それから、Yさんはとても静かで穏やかな日々を送りました。その期間はたった6日間でした。点滴を抜き、栄養・水分共にゼロの状態で6日間生きました。喉が渇いたときには、大好きなオレンジジュースを数滴舐めるように飲みました。6日間の中でYさんが口にしたものはそれだけでした。 介護職員は、とにかくまめにYさんの部屋を訪れ、声をかけることを徹底していました。Yさんは誰かが来ると嬉しそうに笑ってくれました。息子さんも奥様も、毎日施設を訪れました。日中はYさんと共に過ごし、夕方には「また明日ね。」と帰っていきました。 ...
【第6回】温かい雰囲気の中で死を迎えることを選んだYさん ~Yさんの笑顔~
施設を「温かい」と感じるかどうかは、個人差があります。Yさんはうちの施設がオープンした10年前からケアハウスに入居しており、こちらもとても思い入れがあります。本人が10年に亘る施設生活を温かいものだと感じ、最期の場所にここへ戻ってくることを望んでくれたということはこの上なくありがたいことでした。 息子さんとの話を終え、私たちは急ピッチで入所の準備を進めました。そして数日後にYさんは特養へ入所されました。 入所の日、私はYさんと久しぶりに再会しました。通常入所にあたっては事前に本人と会う面 ...
【第5回】温かい雰囲気の中で死を迎えることを選んだYさん ~家族の決断~
後日、Yさんの息子さんが施設へ来ました。ケアハウスのI相談員と共に私も同席させていただきました。 「結論から申し上げますと、決心がつきました。もう延命的な点滴は望みません。点滴を抜去し、特養への入所をさせていただきたいのです。」息子さんは落ち着いた様子でそう言い、特養への入所申請書を差し出しました。 「わかりました。申請書はお預かりします。今のYさんの状態で点滴を抜くことは死期を早めてしまうかもしれませんが、ご家族様としては施設で最期を迎えたいということですね。」 「家族の思いとしては、正直言って複雑でし ...
【第4回】温かい雰囲気の中で死を迎えることを選んだYさん ~高齢者にとって食事とは~
高齢者にとって入院というものは大きく状態を変化させる要因となります。骨折を治すために数か月入院したことで、骨折自体は治癒できたものの、筋力低下から歩けなくなってしまうということは往々にしてあります。そして、それと同様に入院生活が単調であるがために認知症が進行してしまったり、それまで認知症状がなかった方に突然症状が現れるということもよくあることです。 身体的にも認知面でも入院前の状態とは大きく変わっているだろうな、と思いました。そして、こうしている間にもYさんの状態は刻一刻と変化しているのでし ...
【第3回】温かい雰囲気の中で死を迎えることを選んだYさん~Yさんの変化~
「特養への入所はご家族の希望ですか?口から食べることは全くできていないんですよね?」I相談員へそう訊ねると、「実は、まだ正式な入所希望というわけではないんだ。でも、病院で最期を迎えることに気が進まないらしい。本当はケアハウスに戻りたいけれどそれは難しいから特養を考えているという話で、でも施設で対応できる点滴の方法を話したら迷い始めてしまったようだ。」との返答でした。 ケアハウスと特養の大きな違いは、ターミナルケア(終末期ケア)を行うかどうかという点です。うちのケアハウスでは「看取り」と呼ば ...
【第2回】 温かい雰囲気の中で死を迎えることを選んだYさん ~特養への入所希望~
そんなYさんが特養まで歩いてくることが徐々に少なくなり、いつの間にか全くなくなりました。 そして私はその間に相談員となり今までとは違う業務内容に四苦八苦していたため、Yさんが来なくなったことには気付かず忙しい毎日を送っていました。 ある日、Yさんが特養に入所希望を出しているという話が舞い込んできました。 そういえば、最近全く姿を見ていない…。このときに、初めてそのことに気付きました。話を持ってきたのはケアハウスの相談員Iさんでした。 詳しく聞くと、末期ガンと宣告されており現在は入院中である ...
【小説風事例紹介】温かい雰囲気の中で死を迎えることを選んだYさん
1.ケアハウスのおしとやかおばあちゃん 私が特別養護老人ホームにて相談員として働いていた頃の話です。私が勤めていたのは100床のユニット型特養でした。 同じ敷地内にケアハウス・グループホーム・ショートステイ・デイサービス等も併設されており、それぞれの建物が渡り廊下で繋がっている作りになっていました。 私は相談員になる前、同施設の特養で介護職員として働いておりました。 Yさんは、その頃ケアハウスに入居されていました。施設内は繋がっているため、利用者さんも行き来することができます。 ケアハウスは ...
【小説風事例紹介】どうしても家に帰りたいけれど、家族・地域住民の支援が得られないAさんへの支援
1.入院に至るまで 私は回復期リハビリテーション病棟で、専従MSWとして勤務をしております。ソーシャルワーカーとしての経験は6年目であり、ベッドコントロール、入院判定、クライエントへの入退院支援が主な業務となっております。入退院支援としましては、社会制度の情報提供や手続き、クライエントへの心理サポートや生活の再構築支援、家族への介入や、在宅関係諸機関や医療機関との前方・後方連携と多岐にわたります。また、職場の特性上、ボランティアコーディネーターや地域への公開講座等の企画・運営に携わってもおります。 &nb ...
【試験対策】社会福祉士の試験は科目が多い!どの科目が重要?
社会福祉士試験では、19科目を受験しなければなりません。 一つ一つ全力で学習できれば良いですが、どの科目が重要なのかは知っておきたいですね。 全ての科目から均等に出題されているわけではありませんので、 出題数が多い=重要と考えます。 問題数は、全部で150問であり、第29回では出題数は以下の通りでした。 1.人体の構造と機能及び疾病 7問 2.心理学理論と心理的支援 7問 3.社会理論と社会システム 7問 4.現代社会と福祉 10問 5.地域福祉の理論と方法 10問 6.福祉行財政と福祉計画 7問 7.社 ...
【小説風事例紹介】認知が始まってきた様子のボランティアKさん
1.Kさんとの出会い はじめに、私は大学卒業後に社会福祉士の受験資格をとるため1年間専門学校に通い、その後社会福祉士を取得しました。大学では外国語学部に所属しており、福祉の世界を志したのは21歳頃です。 社会福祉士の資格を取得後、介護老人福祉施設(いわゆる特養)にて介護職員として3年半従事し、その後特養の相談員を6か月、ショートステイの相談員を6か月経験しております。後に退職し、社会福祉協議会にて地域福祉員として就労しております。今年で29歳になります。 それらの経験を踏まえ、 ...