【第6回】 妻のネグレクトにより寝たきり状態であったHさん ~社会的な関わり~
海外旅行の期間は一週間。Hさんにとって自宅以外で一週間過ごすのは初めてということでした。しかしショートステイに到着したHさんに不安そうな様子はなく、「久しぶり」と私や他の職員に声をかけてくれました。 そして、前回利用時と変わらぬ様子で過ごされました。食事のときには必ず部屋から出てこられ、夜眠るとき以外はほとんど食堂やソファで他の方々と同じ時間を過ごしました。レクリエーションにも意欲的に参加してくれました。一週間の間にお友達を作り、その方と笑顔で話す姿も見ることができました。 「 ...
【第5回】妻のネグレクトにより寝たきり状態であったHさん ~初回利用を終えて~
高齢になると、1か月や2か月歩かなければすぐに歩けなくなってしまいます。Hさんの歩行状態低下は間違いなく寝たきりの生活が原因と思われました。歩行状態を低下させるような大怪我や入院歴はありませんでした。それ以外の身体的な能力低下もほとんどありません。入浴時にも自分で身体を洗うことができます。 初めてのショートステイ利用を終え、Hさんは自宅へ戻りました。利用時の様子を奥様へも伝えると、驚いた様子でした。「楽しそうにしていたんですか…、家では寝てばかりなのに。そうですか。じゃあ旅行のときも一週間と ...
【第4回】妻のネグレクトにより寝たきり状態であったHさん ~本来のHさん~
Hさんのショートステイ二日目に、レクリエーションに誘いました。正直言って、お断りされてしまうかなとも思っていました。周りの人と一緒にゲームで盛り上がる姿は想像できなかったからです。しかし、その予想は見事に裏切られました。 風船ボールリレーというものを行いました。利用者の方に一列に並んでもらい、風船を両手で持って上にあげたまま後ろの人にリレーしていくゲームです。途中で落としてしまわないように声をかけながら運びます。Hさんをお誘いすると、少しはにかんだ表情で「できるかね。」と笑いながら参加の意思 ...
【第3回】妻のネグレクトにより寝たきり状態であったHさん ~初めてのショートステイ~
そして、Hさんの初利用の日が来ました。初回のため一泊二日のみの利用です。時間通りにお迎えにあがり、施設に到着しました。Hさんのために用意した居室へ案内し、介護職員に任せて私はその場を離れました。 担当介護職員へは、Hさんのこれまでの生活状況や家族の様子などを事細かく伝えてあります。自宅では自分でトイレに行っているが、歩行状態はかなり不安定で転倒も何度かしている様子であることから、必ず付き添いをするよう指示を出しました。また、ショートステイではそれぞれの利用者に個室を用意していましたが、基本的に食事は食堂で ...
【第2回】妻のネグレクトにより寝たきり状態であったHさん ~妻の無関心~
妻は同じ家にいて、ドーンという大きな音を聞いて夫が転倒したようだというところまでわかっていながら、様子を見にも行かないということでした。いろいろな利用者さんやご家族にお会いしていますが、このような方は初めてだったため、正直言って驚きました。 食事はコンビニなどで妻が買ってきたものを夫の部屋のテーブルに置いておくといつの間にか食べているようだという話でした。三食ともそのように済ませており、また、Hさんは食が細いとのことでした。そういった話を裏付けるかのように、Hさんはガリガリに痩せていました。 ...
【小説風事例紹介】妻のネグレクトにより寝たきり状態であったHさん
1.Hさんとの出会い Hさんと出会ったのは私がショートステイの相談員として働いていた頃でした。ショートステイとは、普段自宅で生活されている方が様々な理由で一時的に宿泊するサービスのことです。家族の介護負担を軽減するためであったり、外出等により介護することができない場合などに利用されます。 Hさんに関してはショートステイ利用希望の75歳男性、と事前に担当ケアマネージャーMさんより話を聞いていました。妻と娘の三人暮らしですが、娘は働いているため日中は妻と二人きりの時間が長いようでした。歩けないわ ...
【第7回】温かい雰囲気の中で死を迎えることを選んだYさん ~最期の時間~
それから、Yさんはとても静かで穏やかな日々を送りました。その期間はたった6日間でした。点滴を抜き、栄養・水分共にゼロの状態で6日間生きました。喉が渇いたときには、大好きなオレンジジュースを数滴舐めるように飲みました。6日間の中でYさんが口にしたものはそれだけでした。 介護職員は、とにかくまめにYさんの部屋を訪れ、声をかけることを徹底していました。Yさんは誰かが来ると嬉しそうに笑ってくれました。息子さんも奥様も、毎日施設を訪れました。日中はYさんと共に過ごし、夕方には「また明日ね。」と帰っていきました。 ...
【第6回】温かい雰囲気の中で死を迎えることを選んだYさん ~Yさんの笑顔~
施設を「温かい」と感じるかどうかは、個人差があります。Yさんはうちの施設がオープンした10年前からケアハウスに入居しており、こちらもとても思い入れがあります。本人が10年に亘る施設生活を温かいものだと感じ、最期の場所にここへ戻ってくることを望んでくれたということはこの上なくありがたいことでした。 息子さんとの話を終え、私たちは急ピッチで入所の準備を進めました。そして数日後にYさんは特養へ入所されました。 入所の日、私はYさんと久しぶりに再会しました。通常入所にあたっては事前に本人と会う面 ...
【第5回】温かい雰囲気の中で死を迎えることを選んだYさん ~家族の決断~
後日、Yさんの息子さんが施設へ来ました。ケアハウスのI相談員と共に私も同席させていただきました。 「結論から申し上げますと、決心がつきました。もう延命的な点滴は望みません。点滴を抜去し、特養への入所をさせていただきたいのです。」息子さんは落ち着いた様子でそう言い、特養への入所申請書を差し出しました。 「わかりました。申請書はお預かりします。今のYさんの状態で点滴を抜くことは死期を早めてしまうかもしれませんが、ご家族様としては施設で最期を迎えたいということですね。」 「家族の思いとしては、正直言って複雑でし ...
【第4回】温かい雰囲気の中で死を迎えることを選んだYさん ~高齢者にとって食事とは~
高齢者にとって入院というものは大きく状態を変化させる要因となります。骨折を治すために数か月入院したことで、骨折自体は治癒できたものの、筋力低下から歩けなくなってしまうということは往々にしてあります。そして、それと同様に入院生活が単調であるがために認知症が進行してしまったり、それまで認知症状がなかった方に突然症状が現れるということもよくあることです。 身体的にも認知面でも入院前の状態とは大きく変わっているだろうな、と思いました。そして、こうしている間にもYさんの状態は刻一刻と変化しているのでし ...

