妻は同じ家にいて、ドーンという大きな音を聞いて夫が転倒したようだというところまでわかっていながら、様子を見にも行かないということでした。いろいろな利用者さんやご家族にお会いしていますが、このような方は初めてだったため、正直言って驚きました。
食事はコンビニなどで妻が買ってきたものを夫の部屋のテーブルに置いておくといつの間にか食べているようだという話でした。三食ともそのように済ませており、また、Hさんは食が細いとのことでした。そういった話を裏付けるかのように、Hさんはガリガリに痩せていました。
寡黙なのではなく、もしかしたら意欲を失っているだけなのかもしれないと思い始めました。これまでに利用したことのある介護サービスは週2回の訪問入浴だけでした。その上、今回ショートステイを希望する理由は、妻と娘の二人でハワイ旅行をするためその期間夫を見ていてほしいというものでした。妻の接し方はとても介護をしていると言えるものではなく、このままでは栄養失調になってしまいます。褥瘡ができていないのが不思議な程の生活状況です。
大体、このような状態の夫を一人置いて海外旅行へ行ってしまうという点も夫への無関心さを表しているようでした。普段から甲斐甲斐しく介護をしていて家族のリフレッシュのためにというのであれば理解できますが、とてもそのような話ではありません。
ショートステイを利用するにあたって大きな問題となることもなかったため、私はすぐに利用に向けての準備をし始めました。また、利用希望は二か月後の日程でしたが、ご本人が初めて体験するショートステイという環境に慣れておくためにも、事前に一泊二日で「お試し利用」をしては?というご提案をしました。これは、本人に慣れてもらうという目的ももちろんありますが、この二か月間で状態が悪化してしまうことも十分考えられる状況であったため、本人のために提案したものでした。
Hさんの場合、プロの目が行き届くと言える定期的なサービスは訪問入浴だけです。しかし、入浴時の関わりだけではわからないことは沢山あります。それ以外の時間を家族だけに任せておくことは危険と判断し、今回の利用希望以外の期間も少しずつショートステイにあててもらえればと思ったのです。