【出版しました】介護福祉士の仕事ってこんな感じなんです。総集編
介護福祉士として働いた実際の事例を紹介しています。
読めば専門職の介護ってこういうものだよね、と気づかされるような、どれも介護職として働いている方にもおすすめしたい事例です。
Kindle Unlimitedで無料で読めるように登録しております。
2.特養へ入所後、ADLが向上したYさん より抜粋
病院から特養へ移ってきたYさんが初めて食事を摂る場面です。
「Yさん、今日は朝から大変でしたね。お昼ご飯は中華丼ですよ。付け合わせにもやしのナムルもあります。どうぞ。」私はそう声をかけて、Yさんの目の前にお盆を置きました。Yさんは少し驚いたように目を見開き、私の顔を無言で数秒見つめました。
何か変なことを言ったかな?と思いながら私が微笑み返すと、Yさんは目をそらし、小さな声で「ありがとよ。」と言いました。
照れ屋なのだろうか?それがYさんの第一印象でした。Yさんはスプーンを自ら持ち、中華丼を1口食べると、「うめぇ。」と言いました。手が止まったら介助していたと病院から聞いていましたが、Yさんはその手を止めることなく、全て完食しました。入院中の平均的な食事量は3割程度と聞いていたので、これにはとても驚きました。
後日、Yさんの娘さんと会話をする場面です。
「皆さんのおかげです。本当にありがとうございます。病院では全然食べてくれなくて…。私がどんなに勧めても、味がしないし食べたくないからいらないなんて言っていて…。でもここへ来てからほとんど毎食食べていると聞いて。」
「そうなんです。何故でしょうね?私たちは別に何もしていないんですよ。Yさんがご自分で食べてくださるので、何もする必要がないんです。」私がそう答えると、娘さんは首を振りました。
「いいえ。ここにいる皆さんのおかげなんです。私、この間母に聞いてみたんです。どうしてお食事食べられるようになったの?って。そうしたらね、声をかけてくださるからなんですって。」
「えっ?」思ってもいなかったことだったので、私は瞬時に理解ができず、「どういうことですか?」と聞きました。
「あのね、母の食事ってミキサーにかかっていて形がないでしょう?病院でもそうだったんですよ。だから、何を食べているのかわからなくて、味気ないのでどんどん食べる気が失せていったそうなんです。でもここの職員さんたちは、食事を運んできたときにメニューの説明をしてくれるんですって。メインは何で、副菜は何ですよって。それを聞いて口に入れるとちゃんとその料理の味がして、美味しいなと思えるようになったんですって。ここの職員さんは素晴らしいですね。私も母が入院中そんな理由で食べなかったなんて気付けなくて…。もっと早く気付いてあげられたら良かったなと思いました。」
目からウロコでした。私は特に意識せず、しかし確かにいつも「今日のご飯は○○ですよ。」と声をかけていました。入所の日、初めての食事のときにYさんが目を見開いて私を見つめた理由がわかったような気がしました。
□掲載ケース
1.最期の場所をどうするか?決断できない家族
2.特養へ入所後、ADLが向上したYさん
3.介護の仕事とは?
4.仕事が生き甲斐だった元国家公務員のAさん
5.プライドの高い元お嬢様のBさん
6.紙と鉛筆と認知症のCさん
7.注文の多い利用者Dさんと仕事のできる介護職員のXさん
8.Fさんの娘さんとの戦い
9.住み慣れた家と認知症のGさん
10.このままで良いHさん
11.認知症のIさんと何も知らない私の関わり方
12.脳出血により生活が変わってしまったJさん
●その他の書籍はMajiriki著者ページよりご覧ください。