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【第2回】 温かい雰囲気の中で死を迎えることを選んだYさん ~特養への入所希望~

そんなYさんが特養まで歩いてくることが徐々に少なくなり、いつの間にか全くなくなりました。

そして私はその間に相談員となり今までとは違う業務内容に四苦八苦していたため、Yさんが来なくなったことには気付かず忙しい毎日を送っていました。

 

 ある日、Yさんが特養に入所希望を出しているという話が舞い込んできました。

そういえば、最近全く姿を見ていない…。このときに、初めてそのことに気付きました。話を持ってきたのはケアハウスの相談員Iさんでした。

詳しく聞くと、末期ガンと宣告されており現在は入院中であるということでした。

数か月前から具合が悪くなり、詳しい検査をしたところガンが見つかったがすでに治療できる段階ではないと言われたようです。

入院し、最初は口から食事をとることができていたが徐々にとれなくなり、現在は全く食べることができないため点滴にて栄養補給をしているということでした。

 

 うちの特養は、医師が在籍しておりましたが常駐はしていませんでした。

看護師も日中しかおらず、夜間帯は介護職員のみとなります。そのため、一日中点滴を流したり針を留置(針部分を刺しっぱなしで固定)したりすることはできませんでした。

つまり、現在のYさんの状態で特養に入所することはできないのです。

 

施設内で対応できる点滴の方法は、日中のみ・かつ栄養分ではなく水分のみの点滴となります。

また、看護師のいる時間内での対応となるため、毎日針を抜き刺しすることになります。

当然針を刺す際には痛みを伴いますし、毎日点滴をしていると徐々に血管が細くなり針を刺すこと自体ができなくなってしまう可能性もあります。

病院での点滴とは違い、「苦痛を伴う上に長くは続けられない可能性がある」ということです。

 現在のYさんの状態で入所を希望するのであれば、この条件での点滴を行うか、もしくは点滴を抜くという決断をするしかありません。

食事が全くとれていないYさんにとって、後者はもちろん死を意味します。

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