ソーシャルワーク実習は実習先を決めることからはじまり、さまざまな段階を踏んで進んでいくことになります。実習先決定後に実施する事前訪問では、実習計画書の確認や実習プログラムの確認、そして事前学習についての伝達が行われることになるでしょう。
事前学習とは、事前に必要な知識を頭に入れておくことによって実習を有意義なものにするために行う学習のことで、実習先によって学習しておくべき内容が異なります。
そこで今回は、介護老人保健施設や地域包括支援センター、老人デイサービスセンターで実習を行う実習生に向けて、事前学習で学んでおくべき内容についてそれぞれ解説します。
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介護老人保健施設
介護老人保健施設の実習では、医療職を含めた他職種連携のあり方や在宅復帰を目指した支援方法について考えていくプログラムが組まれることになります。
そのため、介護人保健施設の社会福祉士に求められている役割について深く学ぶためには、事前学習である程度の予備知識を身につけておく必要があります。特に実習施設の設置根拠や介護保険制度での位置づけ、実習地域の地域概況(ニーズや社会資源など)はしっかりと理解をしておくようにしましょう。
また、介護老人保健施設で働く社会福祉士には、医療職と介護職が連携して利用者を支援するというチームアプローチの中核を担っていくことも求められています。
利用者に対する相談援助技術の知識はもちろん、介護老人保健施設に配置されている医師や看護師、理学療法士、作業聴覚士、言語聴覚士、栄養士、介護士、支援相談員の役割や業務内容について、きちんと理解できた状態で実習に臨むようにしましょう。
特に「社会福祉士の倫理綱領」「守秘義務」「介護保険制度」「個人情報の保護」「実習施設と連携している医療機関の情報」「自己実現への援助の在り方」「チームアプローチ」「高齢者に多い疾患(脳卒中・認知症・骨折などのけが)についての知識」「相談援助技術」といった知識は、介護老人保健施設で次週を行うにあたって必須の知識となるため、必ず復習しておくようにしましょう。
事前学習に使う教材は、実施施設や設置機関のパンフレット、事業報告書や事業計画書、実施施設がある行政が作成した介護予防・介護保険制度のパンフレットを利用すると良いでしょう。直接取り寄せることができない場合はインターネットから入手できることもあるので、諦めずにしっかりと資料収集をするようにしましょう。
可能であれば、実習先である介護老人保健施設を実際に利用している人の介護度や人数、特性について数的・質的に理解しておくこともおすすめです。どんな人が利用しているのか知ることができれば、事前に在宅復帰に向けた支援方法などを考えることができます。実習プログラムに組み込まれるケースもあるので、実習が始まる前にイメージだけでも膨らませておくことで、実習中に慌てることなく対応することができます。
地域包括支援センター
地域包括支援センターの実習では、社会福祉士が行う総合相談・権利擁護・虐待相談・介護予防プランの作成・関係機関との連携等を通じて、ソーシャルワークの基本的な知識と技術を学ぶためのプログラムが組まれることになります。
そのため、現場での実践がどのような理論や機能に基づいて行われているのか学ぶためには、地域包括支援センター創設の背景や求められている役割、機能について事前学習でしっかりと学んでおく必要があります。また、地域包括支援センターにおける実習では介護保険制度を理解しておくことが大切です。効果的な実習を行うためにも、予備知識を持って臨むようにしましょう。
また、地域包括支援センターで働く社会福祉士には、利用者への支援を通じてその利用者が生活している地域を支援することや、地域の支援に必要な仕組みづくりなどの、コミュニティ・ソーシャルワークの力量も求められています。ソーシャルワークの価値や倫理、権利擁護の視点が、現場での実践の場面においてどのような影響を与えるのか考えることができるように、養成校で学んでいる内容をしっかりと復習しておくと良いでしょう。
特に「地域包括ケア」「地域包括支援ネットワーク」「ワンストップサービス」「利用者本位」「自立支援」「介護予防ケアマネジメント」「総合相談支援」「権利擁護」「包括的継続的マネジメント支援」「チームアプローチ」といったキーワードは地域包括支援センターを理解するうえで大切な知識になるので、実習中に聞かれても説明ができるくらいには復習をしておきましょう。
具体的な事前学習の教材としては、厚生労働省の「地域包括支援センター業務マニュアル」や実習先の地域包括支援センターがある市町村のホームページ、行政が作成した介護予防・介護保険制度のパンフレット、地域包括支援センターを運営している法人のホームページをチェックすること等がおすすめです。
老人デイサービスセンター
老人デイサービスセンターの実習では、デイサービスセンター全体の大まかな内容の理解と、地域や関連事業のなかでの位置づけを理解することから始まります。相談員について実習を行うことにはなりますが、相談員の仕事はソーシャルワーク業務とソーシャルワーク以外の仕事が一体化しているため、現場に分散しているソーシャルワーク部分を抽出してプログラムが組まれることになります。
事前学習としては、実習施設の地域状況や地域文化の理解、老人デイサービスセンターの概況、制度上の位置づけを調べることからはじめましょう。
特に「ノーマライゼーション」「ソーシャルインクルージョン」「介護保険制度などの関連福祉制度」「個人情報の保護」「高齢者福祉サービスの状況」などのキーワードについては、しっかりと事前学習で復習しておくことをおすすめします。
実習指導者から実習内容についての説明があった場合は、実習計画書と照らし合わせて実習課題についてのレポートを書くように指示されることもあります。事前学習としてレポートの作成の課題が出される場合は、実習生の情報分析力や資料集の方法などの技量を試されている場合が多いため、養成校に蓄積されている過去の実習生の実習報告書や、市町村が地域の福祉事情についてまとめた資料、市町村の福祉計画、施設の事業報告書または事業計画書を教材にまとめると良いでしょう。
また、老人デイサービスセンターはその他の高齢者サービスに比べると要支援など介護度が低い方が利用している場合が多く、判断能力のある利用者と接する機会が多いといえます。そのため、実習生は接遇などの社会的マナーを十分に心得ておかなくてはいけません。身だしなみや敬語の使い方など、実習前には必ず社会的マナーについても勉強をしておきましょう。
おわりに
介護老人保健施設・地域包括支援センター・老人デイサービスセンターでの実習は、事前学習で予備知識を身につけておかないと初歩的な内容から実習を始めることになるため、実践的な実習内容で深い学びを得るためには事前学習をすることが大切です。知識不足の場合は事前訪問時や実習期間中に事前学習のやり直しを指示される場合もあるので注意が必要です。
また、上記の3施設は利用者と深く関わることになるため、社会人としての基本的マナーについても学んでおきましょう。実習後だけでなく就職の際にも役に立つので、実習を機会に身につけておけると良いですね。
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