ソーシャルワーク実習では、実習生が希望する機関や施設等で実習を行うことができるため、実習先に悩む実習生も多いかと思います。実習先は一度決めてしまうと変更することができないので、どんな実習を行いたいのか実習生の中にビジョンがないとなかなか決めることができません。
そこで今回は、実習先別に実習内容を解説するとともに、それぞれの実習先による特徴の違いについて詳しくご紹介します。
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社会福祉協議会
特徴
社会福祉協議会は、社会福祉法第4条の地域福祉の理念を具現化するために、地域を基盤としたソーシャルワークを展開する専門機関です。住民の地域における自立生活を支えるため、相談活動や在宅福祉サービスの提供、権利擁護事業、日常生活支援、ボランティアの育成、啓蒙活動など、地域の実情に応じて広範かつ柔軟な活動を展開しています。
社会福祉協議会における実習では、個別援助からインフォーマル資源開発、ケアシステムづくり、制度改変まで鳥瞰俯瞰できる社会福祉士を養成するために、探索的かつ研究的な実習プログラムを組まれることになります。
社会福祉協議会での実習は、地域を基盤としたソーシャルワーク実践を体感したい、またはソーシャルワーク技術を現場で学びながら社会福祉士に求められる視点や能力を養成したいという実習生におすすめの実習先です。
実習内容
①職場実習(1週目)
主に講義を中心とし、市町村の概要理解や組織機構の概要全般の理解が達成課題となります。事前学習の内容を確認・補強する意味もあるため、実習生に事前学習で学んできたことを発表してもらうようなプログラムが組まれる場合もあります。
②職種実習(2週目)
社会福祉協議会におけるソーシャルワーク機能を中心的に担っている専門職(福祉活動専門員・地域福祉活動コーディネーター・地域福祉権利擁護事業専門員等)の業務体験を行います。
③ソーシャルワーク実習(3~4週目)
地域を基盤としたソーシャルワークの中核となる『個人アセスメント・個別援助計画作成』と、『地域アセスメント・地域援助計画作成』を軸に学んでいきます。そのため個人アセスメントや地域アセスメントの際は、実際に利用者や地域に訪問するようなプログラムが組まれることがあります。
特別養護老人ホーム
特徴
入所施設事業だけでなく、デイサービス事業やホームヘルプ事業、ショートステイ事業などの在宅サービス事業を併設している場合が多いため、地域生活・在宅サービス・入所サービスという一連の流れの中で地域につながる施設のあり方を学ぶことができます。また、他職種が配置される職場のため、専門職同士の連携のあり方も見ることができます。
ソーシャルワークとケアワークが職種として分離しているため、ソーシャルワークに特化した実習を受けやすいことも特徴です。
介護の現場におけるソーシャルワークについてしっかりと学びたいという実習生は、特別養護老人ホームを実習先として選ぶと良いでしょう。
実習内容
①職場実習(1週目)
施設の概要理解や利用者の介護状況の理解、地域における施設の役割理解についてのプログラムが組まれます。各職種からの説明を受けたり、職種理解の一環としてケアワーク体験なども行います。
②職種実習(2週目)
生活相談員の業務に同行し、生活相談員という職種の業務理解と施設内での役割について学んでいきます。同行が難しい場合は資料の閲覧や利用者交流を行うこともあります。
③ソーシャルワーク実習(3~4週目)
多くの場合は、毎日施設内を巡回して、生活場面面接を行うようにプログラムが組まれます。実習生に面接対応をさせて実践的な面接能力をつけさせるとともに、実習指導者への結果報告をさせることで客観的に自分の面接を見直しできるようにしていきます。
介護老人保健施設
特徴
介護老人保健施設は、医学的な管理下のもと看護師による健康管理や介護職員による入浴・排泄・食事等の介護、理学療法士等によるリハビリテーションや生活訓練を受け、居宅における生活への復帰を目指す施設です。そのためソーシャルワーク実習では、医療職を含めた他職種連携のあり方や在宅復帰を目指した支援方法について考えていくプログラムが組まれることが特徴です。
介護老人保健施設は自宅と病院をつなぐ中間施設としての役割を担っているため、実習でも在宅復帰といった明確な目標に向かって支援を考えることができます。施設での入所を通じて、どのように在宅復帰を目指していくのか考えていきたいという実習生は、介護老人保健施設を実習先に選ぶと良いでしょう。
実習内容
①職場実習(1週目)
介護老人保健施設の役割を理解するために、概要説明などのプログラムが組まれます。場合によっては、施設内会議や行事などに参加することもあります。
②職種実習(2週目)
相談業務の実際と、施設内外との連携のあり方について理解できるように、支援相談員の業務に同行し、アセスメントについても学んでいきます。
③ソーシャルワーク実習(3~4週目)
支援相談員の相談援助業務へ同行し、社会福祉士としての視点から実習施設の相談援助技術について学んでいきます。深く利用者と関わりながら分析をし、利用者の望む生活に寄り添った支援を考える機会を設けるプログラムが組まれることがあります。
地域包括支援センター
特徴
地域包括支援センターの社会福祉士が行う、総合相談・権利擁護・虐待相談・予防プランの作成やネットワークとの連携等を通じて、ソーシャルワークの基礎的な知識と技術を学ぶことができます。社会福祉士養成の視点から、地域包括支援センターでソーシャルワークを行う社会福祉士の業務を中心にプログラムを作成していることが多いのも特徴です。
地域包括支援センターでの実習は、ソーシャルワークの基本的な知識や技術を学びたい、または地域の支援に必要な仕組みづくりなどのコミュニティ・ソーシャルワークについて学びたいという実習生におすすめの実習先です。
実習内容
①職場実習(1週目)
職場実習では、3職種のそれぞれの役割やチームアプローチの方法などの理解を深めることを目的に、講義や同行訪問を中心にプログラムが組まれます。介護保険制度の理解度の確認や、利用者本位のサービスのあり方について考える課題が出ることもあります。
②職種実習(2週目)
地域包括支援センターでは3職種がそれぞれ何を中心的に業務を行っているのか、講義形式と同行訪問などにより学んでいきます。地域包括支援センターの機能と役割について理解した上で、地域の中での役割と介護保険制度上の位置づけとの関連についても、理解することを目的としています。
③ソーシャルワーク実習(3~4週目)
地域包括支援センターの社会福祉士が日常的に行っている業務を通じて、高齢者支援の実際や方法、関係する機関との連絡調整の方法、介護予防事業や介護給付の実際・実情を確認しながら理解を深めていきます。訪問先に同行して実際に利用者に対してアセスメントを行い、支援計画(もしくはケアプラン)の作成を行うプログラムが組まれることもあります。
老人デイサービスセンター
特徴
生活相談員とその他の専門職に分業体制はありますが、生活祖相談員の実習が必ずしもソーシャルワーク実習というわけにはいかないのが現実です。そのため現場に分散しているソーシャルワーク部分を抽出した実習を行うことを特徴としています。
生活相談員の業務は多岐にわたりますが、『レジデンシャル・ソーシャルワーク9機能』の分類に基づいて業務を抽出し、現場の実状に合わせながらソーシャルワークの機能を理解できるようにプログラムが組まれています。
老人デイサービスセンターは家族と地域に密着した事業であるため、家族や地域の中でサービスを利用しながら生活している利用者の理解を深めたいという実習生は、老人デイサービスセンターで実習を行うと良いでしょう。
実習内容
①職場実習(1週目)
老人デイサービスセンター全体の大まかな内容理解と、地域や関連事業の中での位置づけの理解が図れるようにプログラムが組まれます。事前学習で学んだことをレポートにして報告する時間や、理解を深めるための講義が組まれることもあります。
②職種実習(2週目)
生活相談員の業務を観察し、補助的に業務を行う実習を行います。各業務の前後に生活相談員からその業務を行う意味の説明を受け、業務に関する理解を深めていきます。
③ソーシャルワーク実習(3~4週目)
ソーシャルワークの理解を図るため、現場でしか見ることができない資料を閲覧させる体験によってソーシャルワーク実践の追体験を行います。相談援助実習であることから、利用者や家族との面談の機会を継続的に設け、アセスメントから支援計画の立案までを行うプログラムを組まれることもあります。
おわりに
実習先によって、ソーシャルワーク実習の内容や社会福祉士に求められる役割は大きく異なります。
それぞれの特徴や実習内容を踏まえた上でしっかりと実習先を選択することによって、長期間に及ぶソーシャルワーク実習がより有意義なものになると良いですね。
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