社会福祉士を目指す学生にとって、一番気がかりで心配なことは実習ではないでしょうか。今回は実習全体を通して、私が実習の指導者として実習生から受けたことのある質問をいくつかご紹介したいと思います。
利用者とのコミュニケーションが続かない
実習先で、実習指導者から「利用者さんと自由にコミュニケーションをとってきて」と言われることも、実際多々あります。実習中は常に職員と一緒にいるわけではありません。特に施設であれば、レクリエーションの時間や自由時間などで利用者と関わる機会も多くあります。そんな中、多くの実習生から「コミュニケーションが続きません」という質問を受けます。
でも、よく考えてみてください。利用者にとって実習生は初めて会った、よく分からない他人です。普通は自分自身のことを他人に詳しく話したりはしません。まずは利用者と自分との間に信頼関係を築くこと、ラポールの形成を目標としましょう。座学で学んだ手法を実際に試してみるのも良いでしょう。
もしうまくいかない場合は、そこで初めて実習指導者に相談してみてください。スーパーバイザーとして、良かった点・改善点を指摘してくれるはずです。初めからうまくいかなくても大丈夫。失敗することも実習です。失敗を恐れず、積極的に利用者とコミュニケーションを取り、自分なりの方法を模索してみてください。それが社会福祉士としての学びにつながるはずです。
援助関係を円滑にする!現役相談員が実践している、ラポールの形成方法
どんなことを話したらいい?実習先で利用者と会話する際のおすすめテーマ
介護施設でのソーシャルワークが分からない
社会福祉士実習の実習先で、特別養護老人ホームなどの介護施設を希望する実習生もいるかと思います。そんな実習生から質問されることが多いのは「介護施設でのソーシャルワークが分からない」ということです。支援相談員の仕事をイメージして実習先として選ぶ実習生もいますが、多くの施設でまず始めに取り入れられるプログラムは『介護の体験』です。そこで「自分は介護職の実習に来たわけではないのに、どうして介護をしなくてはいけないのか」と悩む実習生はとても多いです。
では、なぜ社会福祉士の実習に介護の体験が組み込まれているのでしょう。それは、ソーシャルワークに取り組む前に、どのような人が利用しているのか、ADLはどのくらいなのか、記録上ではなく実際に体験して感じてほしいからです。
教科書などで高齢者・障害者・児童についての勉強をしているかもしれませんが、実際に接してみないと分からないことも多々あります。『百聞は一見に如かず』という言葉にもありますが、一度も体験していない人に、具体的なソーシャルワークを実践することはできません。麻痺一つとっても、人によってできること、できないこと、できないことへの代用方法も異なります。利用者と密接に関わることによって、自分なりに感じることがあると思います。その気付きを一つ一つ拾い上げて考えていくことが、ソーシャルワークに繋がっていくのです。
事前学習をどのくらいやればよいのか分からない
事前学習についても多くの質問を受けることがありますが、まず必ず、実習先の概要や法的な位置付けについてはきちんと理解を深めてから実習に臨んでください。基本的なことは知っていて当然とみなされ、そこから何を学びたいのかを質問をされることもあります。あまりにも理解ができていない場合は、学びなおしもありますので気を付けてください。
また、事前学習として様式に当てはめて実習先に提出することはありませんが、実習担当者としては社会福祉援助技術やバイスティックの7原則についても理解を深めておいてほしいと感じています。社会福祉援助技術やバイスティックの7原則を理解している実習生と、ただ何となく理解している実習生では、実習での学びに大きく差が出てきます。理解度によって、ソーシャルワークで意識させる部分のポイント指導が変わってくるので、有意義な実習にするためにもしっかりと勉強してきた方が良いでしょう。
個別援助の基礎!相談援助の展開過程、ケースワークの流れを理解する
おわりに
福祉の現場に入ると、職員の忙しさに声をかけるのも戸惑うことがあるかもしれません。
しかし一日を通して疑問に思ったこと、困っていることなどは、我慢せずに実習指導者に相談をしてみてください。きっと良い方向へ導いてくれると思います。
実習を有意義なものにできるかどうかは、自分自身にかかっています。積極的に行動し、実りある実習にしていきましょう。
ココに注目
学校では教えてくれない詳細まで記載しています!