援助関係を円滑にする!現役相談員が実践している、ラポールの形成方法
この記事では、「実際の現場ではどうやってラポール形成をしているの?」という具体的な疑問に対し、現役相談員が実際に行ってきた方法を紹介します。
ラポール形成はコミュニケーションを円滑に取るための手法の一つです。もともとの意味はフランス語で「橋をかける」、現在日本では「信頼関係を築く」という意味で使われています。主に心理療法に用いられており、クライアントとの間に信頼関係を築くことを「ラポールを形成する」と言います。
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社会福祉士に興味がある方に読んでもらいたい1冊です。本HPで連載していた事例を紹介しています。施設相談員がメインの事例となっており、介護福祉士と何が違うのか、どんなことをするのかよくわかると思います。小説風に書かれているので読みやすいかと思います。
◎ラポール形成の重要性~体験談を踏まえて~
ここからは私が実際通所施設の支援相談員として「ラポールの形成ってすごく大切」と感じた体験を、T様という利用者様を例にお伝えします。
私→30代 女性 通所施設の介護職兼支援相談員。業務内容は主に契約、担当者会議への出席、稼働管理、経営、現場リーダー
T様→86歳 男性 要介護2 【日常生活自立度】J2 【既往歴】肺気腫、高血圧
本人が納得していない通所施設の利用開始
T様と初めて面談した際伺った解決すべきニーズは、「禁煙」と「清潔保持」。T様には重度の肺気腫があり、主治医からもこのまま喫煙を続ければ命の保証はできないと言われていましたが、毎日20本以上の喫煙を続けていました。また、もともと入浴が嫌いな方で、排泄の失敗が多くなるも、自宅では入浴されず、家族がとても困っているとのことでした。面談開始後、T様は一言も話していただけず、目も合いません。通所施設の利用については家族からの強い希望であり、本人様は納得が行っていない状態での面談でした。
ラポール形成は世間話から
全く目を合わせていただけないT様。話しかけても、返答はありません。そこで、通所施設へ通う話は一旦置いておき、T様の生い立ちや趣味について、ご家族に話を聞いてみることにしました。そしてT様と私の出身地が同じことが判明します。出身地が同じとわかってから、私に興味をもって頂けた様子で、目を合わせて会話をしてくださるようになります。その後趣味は写真撮影で、いくつかの賞ももらったことがあると、賞状を見せてくれました。私が通っていた学校の近くの風景も、写真を取りによく行っていたと聞き、話が盛り上がり上がります。話し始めて30分後、T様ご自身から何度も私の名前を確認し、笑顔で接して頂けるようになりました。その後、改めて通所施設開始の話を振った所、「まあ、少しなら行ってみるか」と、ご利用に繋がりました。
継続的なラポールの構築
開始時は週に2回からご利用頂きました。入浴や禁煙に関して、T様より強く拒否があったりと、はじめはスムーズな流れはできません。そこで対応窓口を私に定め、なにか問題が起こったときは毎回話し合いを行い、介助方法を見直し、利用が始まって3ヶ月後には入浴ができるようになり、禁煙にも成功しました。その後本人様、ご家族、ケアマネジャー様と定期的な話し合いをもち、現在では週6日利用して頂けています。本人様のQOLの向上、施設の売上や稼働アップへの貢献、そしてケアマネジャー様とのラポールの構築につながる結果となりました。
コツは3つ
今回も含め、初めての利用者様と会う時に、私が気をつけていることは3つあります。
状況の把握
話し合いに入る前に、ケアマネジャー様より頂いた資料で、本人様の全体像を把握します。細かいところまで覚えられればいいですが、私はざっくり全体を把握するように意識しています。病歴や趣味、ADLを通して、通院などの移動状況、移動頻度、衣食住、友人関係や家族とのつながりを想像することもできます。ラポールの形成とは、実際本人様と会って人間関係を構築していくことですが、そのときに状況把握をするのはすこし効率が悪いです。実際お会いしたときも話がスムーズに進みます。
話のきっかけづくりと傾聴
今回は初回面接の状況的に、T様自らラポールの形成を望まれているような素振りは見られませんでした。これは実際現場ではよくあります。なので、こちらがラポールの形成を望んでいることがわかるような接し方や、本人様が話し出しやすいようなきっかけづくりは、慎重に行いました。キャリブレーションやミラーリング(私はこれがすこし苦手ですが)、マッチングを意識して行います。また本人様が話し始めてからは、徹底して聞き役となりました。はじめ入浴や禁煙を拒まれていましたが、徹底的に本人様の話を聞き、話しを整理していくことで、解決策が見えることもたくさんあります。
継続的な信頼構築
今回は初回面接後、たくさん問題が起こりました。T様は私が思っていた以上に入浴や禁煙への意欲がなく、時には声を荒げたり、職員に手をあげそうになることもありました。T様に納得してご利用いただくには、T様とのラポールを深める必要性を感じ、問題が起こるたびに丁寧に話合いを重ねました。これを継続的に行うのは正直骨の折れる作業ですが、その後のラポールの構築に大きく影響しました。T様に納得して利用される土台には「自分の意見を聞いてもらえる」という信頼(=ラポール)があったのではないかと思います。
まとめ
支援相談員は”施設と家族”や”地域と利用者様”など、人の間に立つ仕事が多いため、コミュニケーション能力が必要と言われています。私ははじめコミュニケーションのとり方が上手ではなく、不安を感じることがよくありました。ラポールは勉強し、実践することで自信につながります。是非今回の話を参考に、試してみてください。