意外と難しい?電話で相手とラポールを形成するときのコツと注意点
この記事では、「実際の現場ではどうやってラポール形成をしているの?」という具体的な疑問に対し、現役相談員が実際に行ってきた方法を紹介します。
支援相談員をしていると、ラポールの形成が重要になってくることが多くあります。ラポールの形成とは、信頼関係の構築を意味します。支援相談員がラポールの形成をしていく相手は、利用者様、ご家族、現場職員、多職種、上司、ケアマネジャー様など、男女問わず幅広い年齢層の方になります。
現在コロナ禍においては、直接訪問することができずに、電話を使用してのコミュニケーションを図っているところも多いのではないでしょうか。
今回は、電話でのコミュニケーションのとり方を通して、電話を使用してのラポールの形成について、注意点なども含めて考えていきます。
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ラポールの形成の具体的方法
ラポール形成の上で欠かせない考え方の一つに、ペーシングを行うというものがあります。これは相手の呼吸の仕方や話し方、状態に合わせて会話をすることを言います。そしてペーシングを行うには4つの技法があります。
・キャリブレーション・・・相手が本心で何を思っているか観察する
・ミラーリング・・・視覚的に相手に合わせる
・マッチング・・・聴覚的に相手に合わせる
・バックトラッキング・・・オウム返し
今回は電話で行う事のできる技法である、マッチングとバックトラッキングを取り上げます。
マッチングとバックトラッキング
マッチングとは、話すスピードや声の大きさ、声の高さなど、聴覚的に行うペーシングスキルです。声のトーンなどを観察し、相手に合わせて会話をするため、電話などの営業活動で使用することができます。
バックトラッキングとは、「オウム返し」とも呼ばれます。相手の話したことをそのまま返す事により、相手にこちらが理解していることを伝え、安心感を与えます。
マッチングとバックトラッキングは、対面でラポールを築くときには、キャリブレーションやミラーリングと共に使うことができます。視覚情報や雰囲気、観察をしながら声のトーンを合わせたり、表情とともに安心感のある声を使用することが、本来の使用方法です。なので、電話で使用する際は、特別に注意が必要だなと感じます。
私の失敗談と教訓
ここからは新人相談員だった私が、電話を使用してケアマネジャー様とラポールを築こうとした際の失敗談を通して、電話ならではのラポール形成の注意点などを紹介します。
相手の背景が見えていないことを自覚しておく
ケアマネジャー様もいろいろなタイプの方がいますが、対人の職種であるため、比較的おおらかな話し方をされる方が多いように思います。
おおらかに話してくださるケアマネジャー様は、電話でも丁寧に接してくださいますので、新人の頃の私は、ついつい頂いたお電話の内容が終わっても、「大丈夫そうだな」と感じたときは、マッチングなどを用いて、営業内容を話すようにしていました。
しかし実は、ケアマネジャー様の背景にはもうすぐ出かけないといけないから、その前に一本電話で用件を済ませようということがよくあります。しかし、電話であるがゆえに相手の背景が見えず、考慮できないままこちらが話を勧めていることがあり、何度か外部や上司より注意を受けました。
相手の背景が見えていない状態でのラポールの形成では、「今は忙しくないか?」「今じゃなくてもいい内容を話しても大丈夫か?」など、考えている以上の配慮の言葉が必要となります。
受け身のスタンスを忘れないようにする
電話は本来、解決すべき課題や内容があって使用するものです。なので対面のときに比べ、ついつい「伝えること」に重きを置きすぎる傾向になります。
あるケアマネジャー様と電話でお話をし、後日お仕事で直接お会いする現場がありました。現場が終わり雑談をしていると「電話でははっきり意見される印象だったので、すこし意外でした。」と私の印象を教えてくださいました。
直接会った時には、相手に合わせることを意識して行えていても、電話越しだとついつい意見を伝えることに夢中で、相手に合わせることを忘れがちです。課題解決が目的だとしても、まずは相手の話を傾聴し、相手に合わせる姿勢が伝わるように心がけましょう。
バックトラッキングは慎重に
バックトラッキングは本来、多発するものではなく、相手の表情や状態を見ながら必要に応じて使用するものです。しかし電話では、相手の視覚的情報を得ることができません。確かにオウム返しで返答したほうが、相手にとって安心につながる場面はありますが、間違えると「本当はそうじゃなくて」など、意思の疎通ができずに、ラポールの形成に支障をきたすことがあります。
以前ケアマネジャー様より「困っているんです」とお話され、私は「困っているんですね」と返答しました。私としては相手の気持ちに寄り添って、まずは受容をしようと思ったための発言でしたが、あとから「解決策を提示してほしかった」ということを聞きました。
対面だったら気がつけたかもしれないやり取りだったため、ラポール形成の難しさを感じました。「こういうときは、必ずバックトラッキングを!」のような、正解があることではありませんが、慎重に扱いたい内容だと感じます。
継続的なラポールの構築
開始時は週に2回からご利用頂きました。入浴や禁煙に関して、T様より強く拒否があったりと、はじめはスムーズな流れはできません。そこで対応窓口を私に定め、なにか問題が起こったときは毎回話し合いを行い、介助方法を見直し、利用が始まって3ヶ月後には入浴ができるようになり、禁煙にも成功しました。その後本人様、ご家族、ケアマネジャー様と定期的な話し合いをもち、現在では週6日利用して頂けています。本人様のQOLの向上、施設の売上や稼働アップへの貢献、そしてケアマネジャー様とのラポールの構築につながる結果となりました。
まとめ
現在は営業活動もメールやLINEを使用することが多くなってきていますが、問い合わせや事前打ち合わせ、ちょっとした情報交換は、今後もなくなることはない業界だと思います。ケアマネジャー様とコンタクトが取れるチャンスを上手く活用し、ラポールの形成を行うきっかけになるといいなと思います。