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【社会福祉士実習】トラブルに巻き込まれないようするためには?実習における個人情報保護の現状と対策について

ソーシャルワーク実習では、ケース記録の閲覧や相談面談、訪問面談、ケース会議への参加などを通じて、利用者の個人情報に接する機会が多くあるかと思います。実習先でも、実習生の体験の確保と利用者の個人情報保護の兼ね合いに苦慮することも少なくありません。

そこで今回は、ソーシャルワーク実習における個人情報の取り扱いと、実習生が知っておくべき知識について、詳しく解説します。

社会福祉士通信課程に通われている方対象の企画を進めています。興味のある企画についてご回答ください。

個人情報とは

個人情報とは、個人情報保護法第2条において「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう」と定義されています。

定義の中にある「記述等により特定の個人を識別できるもの」とは、個人を特定できる住所や個人の身体情報、家庭状況、居住情報、財産、職種、社会的地位に関する情報などの個人に関する情報のことで、すでに公にされている情報や映像、音声による情報も含まれます。

ソーシャルワーク実習で取り扱うことの多いケアプランや介護サービス提供記録、苦情内容の記録、事故状況の記録、利用者の家族に関する情報の他、その施設で働く従業員の情報も個人情報になります。

実習生はソーシャル実習を始める前に実習先との間に個人情報に関する契約を結ぶことになるため、守秘義務が課せられることになります。

この契約によって実習生を組織内の人間に準じた扱いをすることが可能になるため、必要に応じて個人情報を扱うことが可能になりますが、もし契約を違反して個人情報を漏えいした場合は故意でなくても刑事罰に問われることになるので、実習生であっても十分に注意するようにしましょう。

ソーシャルワーク実習における個人情報保護の実際

福祉に関する相談援助を行う社会福祉士の養成課程において、利用者やその家族に対する支援方法について理解を深めるためには、生活歴や家族構成等が記載されたケース記録の閲覧が必要不可欠と言えます。

そのため、実習先である施設や機関においては、個人情報保護とソーシャルワーク実習との折り合いをつけるために、様々な対応を行っています。

匿名化による情報提供

実習生は、実際のケースを通じて現代の社会にある問題に触れ、支援のあり方について学んでいきます。

個人情報保護に対する過剰反応をしてケース記録等の閲覧を一切禁止する実習先もありますが、第20次国民生活審議会第12回個人情報保護部会(2006年12月8日)において厚生労働省が示した「個人情報保護に関する主な検討課題」についての見解にもあるとおり、ソーシャルワーク実習においてケース記録の閲覧は不可欠と言えます。

個人を識別できないように匿名化すれば「個人情報」として扱われず、法の規制を受けることはなくなるため、万が一実習先で匿名化による情報提供すら拒まれた場合は、実習指導者もしくは実習担当教員に相談してみると良いでしょう。

本人同意

個人情報の提供において、本人の同意より強いものはありません。本来情報提供をする際には、実習の趣旨を説明した上で情報の主体である本人の了解を得ることが望ましいと言えます。

本人への確認は訪問前に実習指導者が行うこともありますが、面談の場合は面談前に実習指導者とともに相談者へ実習生が立ち会ってもよいか確認をとる場合もあります。

ケース記録等を実習生に閲覧させることは、サービス提供など本来の目的とは異なるため、一般的には「目的外使用」にあたります。個人情報保護法に抵触しないためにも、匿名化されていないケース記録を閲覧する場合は必ず本人の同意を得るようにしましょう。もし不安な場合は、閲覧前に実習指導者へ確認することをおすすめします。

実際に起きたトラブルの事例

ソーシャルワーク実習では深く本人と関わることから、個人情報に触れる機会が多くあります。そのため、実習生本人に漏えいの自覚はなくても個人情報保護法に抵触しているケースもあるのです。

今回は、実際に起きた個人情報に関するトラブルの事例について紹介します。

事例1:実習先の利用者に知り合いがいたことを話してしまった

自宅付近の実習先を選んだ場合、知り合いに会うことも少なくありません。たまたま利用者に顔見知りがいることもあるでしょう。実際にあったケースでは、顔見知りの利用者がいたことを実習生が母親に話してしまい、実習生の母親が利用者家族にそのことを伝えてトラブルになってしまったことがあります。

事例2:実習後に利用者家族に遭遇して挨拶をしてしまった

このケースもよくあることですが、実習終了後にたまたま利用者家族に遭遇することもあります。実際のケースでは、実習生の自宅付近に住んでいる利用者Aさんと特別養護老人ホームの実習中に仲良くなり、地元のことなどで盛り上がった実習生がいました。

その後実習生は無事にソーシャルワーク実習を終了しましたが、後日利用者家族と地域の集まりで顔を合わせることになります。そこでつい「実習ではお世話になりました。Aさんはお元気ですか?」と利用者家族に挨拶をしてしまいました。

実はこの利用者家族は近所の人にAさんが特別養護老人ホームに入居していることを話しておらず、実習生が利用者家族に挨拶したことにより周りの人に知られてしまう事態となってしまいました。

事例3:実習生のSNSを利用者に特定されてしまった

実習生の中には、ツイッターやフェイスブックなどのSNSをやっている人も多いかと思います。

この事例では、実習生が自分のアカウントに「実習が始まった」「今日は入浴介助」「実習が終わった」などの投稿をしていました。特に利用者に関する情報や施設名、写真などは公開していませんでしたが、突然利用者と思われるアカウントから友達申請が来る、他の投稿から自宅を特定されて付きまといをうけるといった事態へと発展してしまいました。

事例を踏まえて

事例1、2では、実習生本人に悪気はありませんでしたが、どちらも個人情報の取り扱いについて軽くとらえていることが原因でトラブルへと発展することになってしまいました。

まず前提として、実習先で知った情報は決して外に漏らしてはいけません。それは同居している家族にも当てはまります。世間話のつもりだったのかもしれませんが、個人情報を漏らしたことにより実習停止となる可能性も考えられます。

最悪の場合、個人情報保護法に抵触したとして刑事罰や民事罰、行政罰が科せられることもあります。実習中に体験したことや話した内容など、得た個人情報に関しては口外しないようにしましょう。

また、利用者家族に関しても、たとえ外で会ったとしても自分から声をかけてはいけません。利用者が施設を利用していることを秘密にしていたり、あまり周りに知られたくないと考えている人は意外と多くいます。目が合った際は会釈程度で済ましたり、向こうから声をかけられるまでは話しかけないなどの対応をすることをおすすめします。

事例3については特に年齢の若い利用者が多い実習先で起こるトラブルといえます。

利用者の中には実習生が来ると個人名で検索してSNSを探すことをする人もいます。顔写真等がなければ特定されることはなかなかありませんが、実習に関する情報を投稿してしまうと特定される可能性が高くなってしまうので、利用者名や実習先の情報を記載していなくても投稿しないようにしましょう。実習先によっては実習期間中のSNS投稿を制限しているところもあります。自分自身の個人情報を守るためにも、実習期間中はSNSを控えるなどの対策をするとよいでしょう。

実習中にしてはいけない行動

個人情報保護のため、ソーシャルワーク実習中にしてはいけない行動があります。

まず一つ目は、実習で得た情報をSNSへ投稿することです。特に個人名や施設名、実習内容などを投稿しないようにしましょう。インターネットに投稿した内容は拡散される危険性もあり、個人情報の漏えいが発覚した場合に完全に削除することができません。重大な問題へと発展することになるため、実習中はSNSの利用を控えるようにすることが賢明でしょう。

二つ目は、自宅から実習先への移動中に、公共交通機関等で実習内容について話すことです。公共の場では誰が聞いているか分かりません。知らない人だけでなく、もしかしたら利用者家族などの関係者が聞いている場合も考えられます。たとえ話す相手が実習生同士であっても、実習先以外で個人情報に関わることを話す行為は個人情報の漏えいになるため決して話さないようにしましょう。

最後は、実習日誌やメモの紛失です。実習日誌は個人情報のかたまりです。ソーシャルワーク実習で知り得た情報が記載されている用紙を紛失してしまうことは大問題です。受け入れ先の法人にもダメージを与えることになってしまいます。実習日誌などの重要書類の紛失には十分注意しましょう。万が一紛失してしまった場合は、実習停止となることも十分考えられますが、個人情報保護の観点からも決して隠したりせず、正直に実習指導者へと報告するようにしてください。

おわりに

個人情報の保護については養成校でしっかりと講義を受けることになるかと思いますが、軽くとらえている実習生も少なくありません。記録の匿名化だけでなく、実習期間中や実習後の言動でも個人情報の漏えいになることがあります。

個人情報保護についてしっかり学んだうえで、利用者だけでなく自分自身の個人情報を守りながら実習に取り組めると良いですね。

執筆者:misoichi
misoichi 平成22年に社会福祉士(国家資格)を取得。その後新卒で社会福祉協議会に就職し、社会福祉士として地域包括支援センターに配属されました。平成25年には社会福祉士実習指導者の資格を取得し、社会福祉協議会の実習指導者として多くの実習生を担当してきました。

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