カンファレンスには、私と看護師、介護士、そして長女様が出席しました。まず、相談員である私から、奥様がSさんに日常的にお菓子をあげているようだということをご報告しました。次に、看護師より糖尿病という病気についてご説明し、進行するとどのような症状が出るのかということや、カロリー計算をして食事制限をすることの必要性などを話しました。1日3回インシュリン注射をしているSさんの現状は、糖尿病患者の中でも「重度」の部類に入ります。そんなSさんにお菓子を与えるということは命を縮める行為であるとも言いました。
「母がお菓子をあげているのは、なんとなく知っていました。母ももちろん父の糖尿病のことやカロリー制限をしていることはわかっています。しかし、今お話しいただいたような専門的知識はもちろんないですし、自分がお菓子をあげ続けることによって父の病気にどのような影響を与えるのかということも、おそらく明確にわかっていないのだと思います。ただ、好きなものを食べたがるから少しくらい良いじゃないか、という軽い気持ちだと思います。」長女様は申し訳なさそうに、こう続けました。「母には私から話してみますが、言うことを聞くかどうか…。昔から父にはとても甘いんです。父の求めることはやってあげたい、そう思ってしまうんです。だから、口ではわかったと言ってもやめられないかもしれません。」
「私たち施設の職員としては、あげないでくださいと禁止することはできません。しかし、医療的観点からこのようなリスクがあるというお話はしなければなりません。それをきちんとご理解された上でご家族様やご本人がそれでも望むことであれば、仕方のないことです。ただ、お菓子をあげ続けることでSさんの身にどのようなことが起こるかということを理解しないままあげ続け、何かが起こってしまったときに後悔していただきたくないのです。」私からこうお伝えし、その日のカンファレンスを終えました。
長女様が帰られたあと、カンファレンスに出席した看護師にこのようなことを言われました。「相談員、あのような言い方ではお菓子をあげることを黙認しますよと言っているようなものではないですか?いいですよとは言えないけど、ご家族がそれでも求めるなら仕方ない…そんなふうに言ってしまっては、あの奥様はあげ続けるのではないでしょうか?」
「それならそれで、仕方がないじゃないですか。私たちが監視して禁ずることなんてできません。」そう私が答えると、看護師は怒ったようにこう続けました。「Sさんの数値であんなカロリーの高いお菓子ばかり日常的に与えていたら、冗談じゃなく命に関わりますよ。病院じゃこんなことあり得ません、自殺行為です。奥様はそれがわかっていないんじゃないですか!?命が縮まるとわかっていて見過ごすんですか?」