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【第6回】 特養の非常勤介護職員Nさん ~変わらぬ日々~

業務内容を変更して一か月ほど経った頃、Nさんは清掃にもすっかり慣れて元々のユニット内だけでなく施設全体の清掃を行うことができるまでになっていました。相変わらず前日に清掃したばかりのところを再び掃除していたり、用具を片付ける場所がわからなくなったりしていましたが、周りもフォローすることにすっかり慣れていたのでNさんが困ることはないようでした。

 

最初に相談してくれたYさんも、そんなNさんを見て安心したようでした。「ありがとうございました。私、相談した頃すごく心配で…。Nさんは利用者さんのことすごく大事に思っているから、あのままNさんがユニット業務を続けていて、それでもし利用者さんに何かあったらNさん自身が傷付いてしまうと思ったんです。でも、相談すればNさんは退職せざるを得なくなるのかな、と思ったらなかなか言えなくて…。すごく迷ったけど、でも相談して良かった。Nさん、何も変わらず元気で明るいNさんのままだもん。」

そう言って、Yさんもニコニコと嬉しそうでした。私も結果的にとても良い道だったと思っています。

 

認知症になったら、何もかもできなくなってしまうわけではありません。むしろ、昔から行っていたことは変わらずできることも多いのです。Nさんは若くに結婚して専業主婦の期間も長かったため、清掃は向いていたのかもしれません。周りが適切な支援をすれば、認知症の方も仕事をすることができるのだと教えていただいたケースでした。もちろん、どこの職場でも可能なことではないと思います。むしろ、このように上手くいくケースは少ないでしょう。しかし、その方が何に困っていて、何を助けてあげれば仕事を続けることができるのか。そのような視点で考えることができれば、認知症などを理由に解雇される方が減るのでは、と思います。

 

Nさんは今も変わらず施設で働き続けています。今年で71歳になったようです。

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