社会福祉士コラム

【社会福祉士】なぜ統計調査技術は社会福祉士の専門的知識として必要?標本抽出の概要。

この記事では、社会調査において使用される標本抽出法について概観し、統計調査技術がなぜ社会福祉士の専門的知識として求められるかについても考えを述べる。考え方の一例として参考にしてください。

標本抽出法

標本抽出法とは、主に量的調査における対象者(標本)を選択する方法のことである。調査において、調べたい対象となる母集団のすべてを調査する悉皆調査では問題にはならないが、日本全体の総意を調べる場合などでは悉皆調査行うことが現実的でない。

その場合の調査には、ある規定の手続きを踏んで母集団から一部を取り出した標本データから母集団の性質を推定したり、母集団の性質に対する仮説を検定したりするのである。

標本抽出法は、その手法から確率抽出と非確率抽出の2種類に分類される。

確率抽出は母集団から出来る限り等しい確率で無作為に抽出する方法であり、非確率抽出は、対象者数が少ない場合に行われ、無作為性を持たない方法である。以下、この2つに関する手法は多数あるが数種類に絞り概観する。

①確率抽出

1)無作為抽出法

無作為抽出法は、母集団から標本を抽出するときに、①どの要素も抽出される確率が等しく、②しかも、ある要素が抽出される確率がある別の要素が抽出されるか否かに関係がない抽出方法である。単純無作為抽出とも呼ばれる。  

例えば、ある母集団1000人から無作為抽出法で100人取り出す場合で用いる方法として、各人に割り当てた連番を元に乱数を生成し100人を抽出する、名前の書かれた紙を用意し100枚の紙を取り出して対象者を抽出する方法がある。

2)層化抽出法

母集団を男女や年齢階級別に層と呼ばれるグループに分け、その層内で無作為に個体を抽出し、それらをあわせて標本とする方法である。また、層の占める割合が母集団と標本で同じようになるように標本数を設定する。母集団の男女比率が1:2であれば、標本も比率を1:2に合わせるということである。

3)二段抽出法・多段抽出法

無作為抽出は母集団の性質を偏りなく表すように設計されているが、対象となる母集団全ての名簿が必要であるため実行は難しい。そのため、二段抽出法・多段抽出法は偏りがあまりなく、実行しやすい方法として考案された。

例えば、全国を対象に高齢者1000人を標本として抽出する場合に、一段目を地域として無作為抽出を行い、二段階目にその地域での子高齢者を無作為抽出するのである。

そのため、全国の高齢者の名簿がなくても、地域のリストとその地域の高齢者のリストがあれば実施が可能となる。

4)集落抽出法(クラスター抽出法)

集落抽出法では、母集団は集落と呼ばれるいくつかのグループにより形成されると考える。その集落を無作為に抽出し、抽出した集落に含まれる個体全部を抽出する。集落は会社や部署、地域体である。二段抽出法との違いは二段目を無作為抽出とせず、全てを対象とする点である。

②非確率抽出

1)有意抽出法

無作為抽出とは異なり、ある種の判断を加えて標本を選ぶ場合の方法である。たとえば、有益な情報や知識を持つと考えられる個人を選んで標本とする場合には有意抽出となる。無作為標本は客観性があるが、有意標本には客観性が乏しくなるため無作為抽出の方が一般的である。

2)便宜抽出法

便宜的に得られる個人や組織をもって標本とする方法である。時間や場所等から調査者に手近な方から抽出方法であり、クラスメートを対象にアンケート調査を行う、駅前の街頭調査等が該当する。母集団を代表する結果になるか否かという点では対象が偏っている可能性があり、調査結果に対する信頼性は他の方法よりも低くなる。

3)スノーボールサンプリング法

雪だるまを雪の上で転がすと大きくなるように、無作為抽出により最初の対象者を選び、その方から次の方を紹介してもらい、次の方からさらに次のという形で紹介によって標本を増やす方法である。

2.統計調査技術がなぜ社会福祉士の専門的知識として求められるか

社会福祉士は”ソーシャル”ワーカーとも呼ばれるように、個人を対象とした援助だけを専門に行うわけではない。社会を対象とした改善と改善に向けた動きの構築も社会福祉士としての役割に含まれている。

社会を対象とした改善運動においては、個人のニーズが発端かもしれないが、個人のニーズから地域のニーズへと昇華させる必要がある。そのためには、調査票等を用いた調査を行い広い意見を収集することが必要となる。

しかし、そこで得られたデータは客観的妥当性がなければ、ニーズそのものが本当に社会全体に存在しているのか否か判断ができない状態に陥ってしまう。

データの妥当性が認められ、ニーズの存在を明らかにすることによって、同じ地域に住む住民や行政も巻き込んだ大きな動きを作り出すことが可能である。

データの妥当性を確保するためには調査票の設計や対象者のサンプリング等の統計調査技術は欠かすことはできない。つまり、社会福祉士がソーシャルワーカーであるためにも統計調査技術が必要であると言える。

参考文献

  1. 新・社会福祉士養成講座5 社会調査の基礎 中央法規出版
  2. Dan Remenyi著 小樽商科大学ビジネス創造センター編(2002)『社会科学系大学院生のための研究の進め方―修士・博士論文を書くまえに』
  3. 杉原(2013)『定量的調査と定性的調査の基礎(第4回) 定性的調査(面接法、観察法)による評価』ヒューマンインタフェース学会誌, 15(1): 31-42

ココに注目

社会福祉士の実習に関する記事が電子書籍で出版されました。実習を乗り越えるためのノウハウ集となっていますので、これから実習に行かれる方、実習中の方必見です!

詳細はこちら

学校では教えてくれない詳細まで記載しています!

-社会福祉士コラム
-,