社会福祉士コラム

【社会福祉士】これまでの地域福祉の発展・展開は?1960年代以降からの動き

この記事では、地域福祉の考え方がどのように発展・展開を見せてきたか、特に1960年代以降から現在の動きについて述べる。考え方の一例として参考にしてください。

地域福祉は社会福祉における新しい考え方、新しいサービスシステムであり、2000(平成12)年以降、社会福祉のメインストリーム(主流)とされている。記事ではどのような過程で地域福祉が発展してきたかを以下に述べる。

1950年代までの社会福祉事業は、生活困窮者、戦災孤児などの救済が主であり、終戦の翌年には、福祉三法体制が確立されたが、地域福祉は国民の間にとって一般的なものではなかった。その後、アメリカのコミュニティ・オーガニゼーション理論が移入されたことによって地域福祉に対する考えが徐々に芽生え始めた。

1960年代の高度経済成長時代に入ると、社会福祉問題が拡大していくなかで、地域福祉への注目がされるようになった。それにより福祉三法体制から、精神薄弱者福祉法、老人福祉法、母子福祉法が制定され、福祉六法体制へと拡大した。

1970年代に入ると経済優先社会から、地方における過疎、都市の過密化、生活環境の悪化などが国民の大きな関心となり、政府においても経済成長優先の政策から、地域社会の再編成を目指したコミュニティ政策が打ち出されるようになった。

そこで地域福祉の理論やサービス提供体制のあり方に大きな影響を与えたのが、イギリスにおけるコミュニティケアの思想とその実施体制である。

わが国でも、1969年「東京都におけるコミュニティケアの進展について」が公表され、施設ケアの対置概念としてコミュニティケアが取り上げられた。さらに1971年には中央社会福祉審議会によって「コミュニティ形成と社会福祉」が公表された。そこでは、コミュニティケアは、「社会福祉の対象を収容施設において保護するだけでなく、地域社会すなわち居宅において保護を行い、その対象者の能力のよりいっそうの維持発展を図ろうとするものである」と定義されている。このように、1970年代前半から後半にかけて、地域福祉を理論的に明らかにし、体系化しようとする動きが活発化していた。

同時期に、地域福祉の理念にも通じるノーマライゼーションの理念は、わが国においては、障害者が地域社会において一般住民と同様の生活条件を獲得するものとして理解され普及した。そしてそれは、その後の障害者の自立生活運動やバリアフリーの考え方と結びつき、地域福祉に新しい視点や政策を生み出した。

その後、地域福祉が飛躍的に実体化していくのは、1990年代に入ってからである。政府は1989年、高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴールドプラン)を公表し、10年後までの高齢社会へ対応するための施設や在宅福祉サービスなどの整備目標を示し、その具体的な対応について市町村ならびに都道府県の計画的推進の必要性を提起した。

そして、翌年に行われた福祉関係八法の改正により、社会福祉事業法における地域福祉の基本的展開の方向性は市町村を中心に在宅福祉サービス、社会福祉施設を計画的に整備し、推進するものに変換した。

その後、少子高齢化の進展などに伴い、社会福祉制度の変革について論議が進められた。そこで大きな変革があったのは社会福祉基礎構造改革である。その内容としては、サービスの措置制度から利用制度への転換、福祉サービスの質の向上のあり方、市町村による地域福祉計画の策定などが含まれていた。

そして、その後の論議を経て、2000年6月に社会福祉事業法等の抜本的な見直しを盛り込んだ「社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律」が公布・施行されることとなった。またこの時期に社会福祉事業法は社会福祉法に名称を変更した。

この社会福祉法への改称・改正によって、福祉サービス利用者の利益の保護および地域における社会福祉(地域福祉)の推進を図ることが、社会福祉の目的として明確に規定された。つまり、地域福祉が社会福祉のメインストリーム(主流)として位置づけされたのである。

参考文献

1.新・社会福祉士養成講座9 地域福祉の理論と方法 中央法規出版

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