この記事では、ノーマライゼーション及びリハビリテーションの基本的な考え方を概観し、それらを実現するための取り組み及び課題を考察する。考え方の一例として参考にしてください。
ノーマライゼーションの考え方
バンク・ミケルセンはノーマライゼーションを「障がいのある人たちが、障がいがありながらも普通の生活が出来る社会環境をつくること」と定義している。これは、障害がある人々側が変わるのではなく、社会環境側が障がいのある人々に対してノーマルであるべきという考え方である。バンク・ミケルセンは知的障害者の親の会と共に運動を展開し、知的障がい児者は、家庭で療育され地域で暮らすこと、ノーマルな人と同じように生活する権利を持ついう考えを、1959年の障がい者福祉法で結実させた。
一方で厳密な定義をしなかったミケルセンに対し、ニィリエはノーマライゼーションを8つの原理に整理し世界に広めた。「ノーマライゼーションの原理は、知的障害やその他の障害をもつ全ての人が、彼らがいる地域社会や文化の中でごく普通の生活環境や生活方法を得られるように、権利を行使すること」と定義している。8つの原理でごく普通の生活とはどのようなものであるかを明確にし、障がいをもつ人々をノーマルにするのではなく、環境などをノーマルに近づけ、普通と同等の生活をすることを目指した。
さらにヴォルフェンスバーガーはこの考え方を展開し再定義を行っている。ノーマライゼーションの考え方をそのまま当て利用するのではなく、その国や地域に根ざした文化的なものを利用し実現することに注目し、PASSという評価基準を作成、PASSINGに発展させている。
このようにして形成されてきたノーマライゼーションは、障がいをもつ人々を排除するのではなく、障がいをもっていても、障がいをもっていない人々と等しく、当たり前に生活出来るような社会こそノーマルの社会である、という根底の考えを理念としている。
リハビリテーションの考え方
リハビリテーションとは、再び適した状態に戻すという意味を持っており、身体を元通りにするための機能回復訓練だけではなく、体の健全な部分の能力向上や適切な補助具などで実用面での能力向上、さまざまな支援を利用した生活面の向上など、その人の「人間らしく生きる権利」を回復していくことである。
また、WHO(世界保健機関)ではリハビリテーションを以下の通り定義している。
「リハビリテーションは障害(能力低下や社会的不利)及びそれにもたらす状態を改善し、障害者の社会的統合を達成するためのあらゆる手段を含んでいる。さらにリハビリテーションは障害者が環境に適応するための訓練を行うだけではなく、障害者の社会的統合を促がすために全体としての環境や社会に手を加えることも目的とする。そして、障害者自身、家族、彼らが住んでいる地域社会が、リハビリテーションに関係するサービスの計画や実行に関わり合わなければならない。」
これらから見るにリハビリテーションの理念は、障がいをもった人が人間らしく生きることを取り戻すことであり、その方法は障がいを持つ人々に対する機能回復を行うだけではなく、ノーマライゼーションと同様に社会や環境に手を加えて、社会的統合を目指すものであると考えられる。
ノーマライゼーションやリハビリテーションを実現するための取り組み及び課題
次にノーマライゼーションやリハビリテーションを実現するための取り組み及び課題について考察したい。
我々の生活の身近な例として、バリアフリーに関する取り組みを挙げる。バリアフリーは障がいをもつ人々にとって活動の妨げになるもの(バリア)を取り除いていく(フリー)という意味で広く認識されている。
例えば、車いす利用者専用のトイレ設置や、視覚に障がいを持つ人のために文字列と合わせ点字を施す、バスの昇降時の段差を無くすなどが挙げられる。これらは物理的にだけでなく、社会的、制度的、心理的なバリアを取り除いていくという広い意味も持っている。
ノーマライゼーションやリハビリテーションを実現の実現においては、この社会的、制度的、心理的なバリアを取り除くことが大きな課題であると考える。
我が国においては未だに障がいを持っている人々に対して「かわいそう」「がんばっている」「こわい」などの偏見があり、異質な者として捉えられることがある。これらの考え方がある限りは、障害をもつ人々への特別対応と変わらず、上述のノーマライゼーションやリハビリテーションの理念とはかけ離れた社会になってしまう。これらの障害をもつ人々への偏見は、両親や友人などとの関わりの中で無意識に形成されるものであると推察される。
そのため、社会はあらゆる多様性をもった人々で構成されていること、障がいをもつ人は助けてあげる人達ではなく、共に生きる人達であることを教育の中で伝え、徐々に意識の変革を図っていくことでノーマライゼーションやリハビリテーションの実現に近づけると考える。一朝一夕にできることはないが、長い時間をかけて徐々により良い社会へと近づけるように努力を続けることが重要であると考える。
引用・参考文献
- 福祉臨床シリーズ編集委員会編(2019)『障害者に対する支援と障害者自立支援制度 第4版』弘文堂
- 社会福祉士養成講座編集委員会編(2019)『障害者に対する支援と障害者自立支援制度 第6版』中央法規
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