ポーガム(Paugam,S.)
(1960-)フランス生まれ。フランス社会者。学貧困を社会全体との関係から捉える貧困観に立ち、貧困の基本形態を、①統合された貧困、②マージナルな貧困、③降格する貧困の3つに分類した。
「統合された貧困」は、貧困がスティグマ化されていない貧困状態のこと。「マージナルな貧困」は、社会の一部だけにみられるマイノリティとしての貧困層のこと。「降格する貧困」は、失業率の上昇、不安定雇用、絆の弱体化等を特徴とする現代の貧困のこと。
『福祉レジームとヨーロッパにおける失業経験』(2000)などで欧州国際比較調査を実施し、貧困・社会的排除研究の第一人者として国際的に知られる。
ピケティ(Piketty,T.)
(1971年-)フランス生まれ。フランスの経済学者。2013年刊行の「二十一世紀の資本」で、20か国以上の過去3世紀にわたる税務データを収集・分析し、経済格差の拡大とその問題点を指摘。世界規模での富の再分配を提唱して国際的なベストセラーとなった。
収益的資本を増加させる構造と、経済的資本が個人の努力とは無関係に相続によって継承されるしくみが、格差の拡大を引き起こしていると指摘し、資産を持っている人ほど不労所得が増加し、少子化により相続の資産が集中することで、貧困層と富裕層の連鎖が格差を拡大するという悪循環が生まれていると提唱している。
リスター(Lister,R.)
イギリスの貧困研究・社会政策研究者。
スピッカーの図を描き換えて車輪モデルを概念として示した。この車輪の主軸には物的困難があり、同時に外輪に非物質的側面、社会的あるいは文化象徴的な側面から把握される部分がいつもつきまとっている。車輪の軸と外輪のタイヤは運動して動いていくものであり、貧困はこの両者の連動の中で把握される。外輪にはスティグマ、社会的排除、パワーレス状態、人権の否定、市民権の削減、貧困者を軽蔑、積極的非難などがあると提唱する。
ロールズ(Rawls,J.)
(1921-2002年)アメリカ生まれ。アメリカの政治哲学者。2つの正義の原理を提起している。
①基本的自由に対する平等の権利、②格差原理である。社会的不平等を解消し正義と公正を実現するためには、「最も不遇な人々の利益を最大化するための資源配分が、正義にかなう」と考えた。また、「無知のヴェール」という言葉を用いて、自分の地位や立場について全く知らないという原初状態にて初めて公正な価値判断ができると提唱した。主な著書は『正義論』。