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【第1回】 在宅生活を強く望むUさん ~困難ケース~

Uさんと初めて出会ったのは、私がショートステイの相談員として勤めている頃でした。ある日、以前からお付き合いのあったケアマネKさんから連絡が入ったのです。Kさんはやり手のケアマネで、その腕を買われてか困難ケースを数多く抱えている方でした。そして、Uさんもそんな困難ケースのうちの1人でした。

 「ちょっと相談があるんだけど、ショート利用させてあげたい人がいるのよね。でも難しい人でさ…」と、Kさんは切り出し、Uさんについて詳しく教えてくれました。

 77歳、女性。中等度~やや重度の認知症あり。現在自宅にて息子N(次男)と二人暮らし。子供は二人おり、45歳の長男が隣の県に住んでいるが家庭を持っているため日常的な介護はできない。同居している次男は39歳の独身で、精神疾患があり無職。Uさんはずっと薬剤師として働いてきた人であり、本人の年金と貯金で現在の生計を立てている。次男は気分のムラが激しく、Uさんの介護はほとんどできない状態である。食事は毎日次男が買ってくるか作っている。Uさんは認知症があるが、身体は元気に動くため自分の身の回りのことは自分で行うことができる。しかし、入浴したかどうかや着替えたかどうかを忘れてしまうため清潔が保たれておらず、掃除もしないため部屋の中はやや臭う。日常的な徘徊はないが、病院などに自分で行ってしまうことは時折ある。本人に認知症である自覚が全くないため、病院にて検査を受けたことがなく正式な診断も受けていない。プライドがとても高く、おばあちゃん扱いされることをひどく嫌うため、デイサービスなど他利用者と同じ時間を過ごしたり遊んだりすることが難しいと考え、これまで定期的な利用をしたことはない。ショートステイを一度利用したことがあるが、宿泊するということが理解できず、帰宅願望が強すぎて対応できなくなり、強制的に帰宅となってしまったという経緯があり。

 「どうかしら?難しい人なのはわかっているんだけど、どうにかショートステイを月1回くらいからでいいから入れていきたいと思ってるのよね。同居している息子さんもお母さんのことで参っていて、精神的にも状態が良くないのよ。お互いにずっと家にいるもんだから、少し離してあげた方がいいと思うの。」

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