この記事では、障害者権利条約、障害者基本法、障害者差別解消法における障害者差別をなくすことに関連する点を概観し、その後自身の考えを述べる。考え方の一例として参考にしてください。
障害者権利条約、障害者基本法、障害者差別解消法における障害者差別をなくすことに関連する点
障害者の権利に関する条約(以下、障害者権利条約)は2006年に国連総会で採択され、合理的配慮の否定を含む障害を理由とするいかなる差別も、人間の固有の尊厳及び価値を侵害するものとして禁止している。
障害者基本法については障害者権利条約に批准するために改正が進められた。そのため第4条の差別の禁止において、「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」という、従来の規定と同じ趣旨の内容に加えて、「社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによって前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない」と合理的配慮の考え方が取り入れられている。
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下、障害者差別解消法)は、前述の障害者基本法第4条の差別の禁止を具体化するためのものである。差別を解消するための措置として、差別的取扱いの禁止については、国・地方公共団体等、民間事業者に法的義務を課し、合理的配慮の不提供の禁止については、国・地方公共団体等には法的義務を、民間事業者には努力義務を課している。
ここまで条約や法律において障害者差別をなくすことという観点からみてきたが、障害を理由に差別するということは禁じられているのは勿論であり、これは日本国憲法第14条に規定されている法の下の平等においても禁じられていると換言できることである。
また、合理的配慮の不提供についても差別とほぼ同列に扱われていることが分かる。合理的配慮は多大な負担を強いたりしない限りにおいて、配慮や調整を行うことである。しかし、合理的配慮は基準の曖昧さが、より障害者に対する風当たりを強くしないかという懸念がある。
合理的配慮については、過度な負担にならないようにと記載はあるが、明確な基準が設けられておらず、どこまで合理的配慮として行うべきかという点が疑問として生じる。具体例が合理的配慮指針事例集としてまとめられているが、該当することすべてを行うのは現実的ではない。勿論、過度な負担にならない範囲とされているものであるため、できる範囲で良いはずである。
だが、障害者側で想定している合理的配慮の範囲と行う側の範囲に相違があった場合に、障害者側から合理的配慮がなされていないと言われると悪評を恐れる配慮側の立場は弱いものであり、多少の無理をしてでも求められる範囲に合わせようとするのではないだろうか。そうなると配慮側にとって障害者は出来れば避けたい相手と思われてしまい、それは本末転倒と言わざるを得ない。
つまり、合理的配慮は配慮側だけが考え、提供できれば良いのではなく、障害者側も相手側の状況を鑑みて適切な範囲での配慮を求めるということが基本的な運用であると考えられる。これは共生社会では支える側・支えられる側のどちらにも回るものであり、それを体現しているのかもしれない。
参考文献
1.新・社会福祉士養成講座14「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」 第6版 中央法規出版
2.内閣府 平成26年 障害白書
3.厚生労働省 合理的配慮指針事例集
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