国際生活機能分類(International Classification of Functioning,Disability and Health)通称ICFは2001年5月にWHOで採択された「健康の構成要素に関する分類」のことです。
この分類は全ての人々のためにあり、世界共通の基準としてさまざまな分野で活用されています。
ICF(国際生活機能分類)とは何か
ICFは異なった立場・専門分野の人々に対して「生きることの全体像」を示すために存在します。その具体的な目的以下の通りです。
- 健康に関する情報や健康に影響する因子を深く理解する
- 健康に関する共通言語を確立し、さまざまな関係者間のコミュニケーションに役立てる
- 国、専門分野、サービス分野、立場、時期などの影響を受けないデータの比較・活用
ICFは幅広い分野で活用されていますが、特に医療・介護の現場で導入されることが多いです。
ICF(国際生活機能分類)の考え方
ICFでは「生きていく上での生活の全て」に対しての障害を分類します。
この障害とは心身機能だけでなく、コミュニケーション上の問題や周囲の環境による障害も含まれ、対象者の今の状況を詳しく理解し、より良い生活を送るためのサポートに役立ちます。
ICF(国際生活機能分類)の構成
ICFは「健康状態」、3種の「生活機能」、2種の「背景因子」の要素で構成されており、それぞれが影響を受け合っています。
分類は約1,500項目にも分けられるため、より細かな分類が可能です。ここからは、それぞれの要素を詳しく説明しましょう。
健康状態
健康状態は文字通り怪我・病気・障害の有無、肥満・妊娠・加齢などを指し、ストレスのような心身的な要素も含みます。
<例>
- 妊娠している
- 3年前に脳梗塞を発症した
生活機能
生活機能は次の3種の要素に分けられます。
心身機能・身体構造
心身機能とは、視覚・聴覚・内臓・手足の動きや柔軟性・声を発する能力など体の生理的かつ心理的機能を指しています。
身体機能は、体の構成部分などの解剖学的な分類で、内臓や皮膚などの体の構造面を示します。
<例>
- 認知機能の低下
- 右片麻痺
活動
目的を持って行う行為を指しています。具体的には仕事をする・家事をするなどの行動だけでなく、歩く・座るなどの動作全てが活動に含まれます。
また活動は「能力:できる能力がある」「実行状況:実際に行っている」の2つの面を評価します。
<例>
- 杖を使えば歩行可能
- 外出には車椅子を使う
参加
参加と活動は密接な関係にあり、活動の先に参加があると考えて良いでしょう。
例えば主婦であれば家事という役割を持って家族に参加しており、会社員であれば仕事をして会社に参加しています。
<例>
- 習い事に通っている
- デイサービスに通っている
背景因子
背景因子は生活機能に影響を与える因子を指しており、生活機能の問題の原因を示します。
背景因子の種類は次の2つです。
環境因子
対象者を取り巻く環境のことで、物的・人的な要素全てを含みます。
建物・交通機関・自然の環境、家族・同僚・友人などだけでなく、法律・医療・福祉も環境因子の一つです。
・家をバリアフリー化した
・娘家族と同居しておりサポートが受けられる
個人因子
対象者の特徴を指しており、性別・年齢・民族などの大きな分類から職歴・学歴などの生活歴と、個人の価値観や嗜好なども含まれます。
<例>
- 男性・87歳
- 趣味はウォーキング
- 40年間会社員として勤め、現在は妻と過ごしている
ICFとICIDHの違い
ICFができる前は1980年にWHOで定められた「国際障害分類(ICIDH)」が幅広く利用されていました。
ICIDHはICFに比べて「障害」に主体を置いた分類方法で、本人が抱える障害が生活機能上の問題を引き起こす原因であるという考え方です。
例えば、足に身体的な障害があり生活機能が低くなってしまう理由には、本人の障害以外にも近隣にバリアフリー設計の店舗・駅がない、対象者をサポートする人がいないなどの原因があるはずです。
ICIDHでは対象者の障害のみを原因と考えるため、その視点が非常に狭いものであることが分かるでしょう。