社会福祉士コラム

【療育体験】何か得意なものを1つでも作ることが突破口

 

障害の種別

アスペルガー症候群

 

何か得意なものを1つでも作ることが突破口

4歳になってもうまく言葉が出てこないことや極端に人見知りであることから、うちの子はどこか他とは違うとうすうす思っていました。保育所では他の子となじめず、「このままでは小学校に入ってから苦労する」と先生に言われてしまいました。

 

はっきりと障害がわかったのは6歳の時です。授業内容を無視して、自分の興味のあることをやり続けてしまうという行動が目立ったからです。学校の先生の勧めで大学病院の精神科を受診し、幼少時の特徴などから典型的なアスペルガー症候群と診断されました。

 

学校の人間関係に馴染めないという点が一番苦労しました。いじめまがいのことも何度もありました。最初は子ども会やボランティアに参加し、積極的に他の子と交流する機会を設けましたが、本人が強い拒否反応を示して足が遠のきました。

 

狭い町内なので近所にも噂が広まり、「変な子」「何を考えているかわからない」といった偏見の言葉の嵐に親子で泣いたこともありました。そのことから学校も休みがちになり、私や夫も話し合いの末に言い争うことも増えました。

 

また、家では突飛な行動や指示が伝わらないことに悩みました。何でも言葉通りにとるというのがアスペルガーの特徴です。「宿題あるの?」という言い方では純粋に「ある」と答えるだけで、「宿題をやりなさい」という意味とは捉えられないのです。

 

わかっていても、毎日のこととなると疲れました。学校では内気でも、家に帰ると堰を切ったようにわがままを言うことが多くありました。人の状況が全く考えられず、単刀直入になりやすいという面はどのような子どもでもあるのですが、アスペルガーでは特に顕著なのです。

 

それらを乗り越えるために、いじめや偏見は障害を持った以上「当然あるもの」と受けとめました。その上で悲観的になるのではなく、どういった対策があるのか考えました。

 

息子の場合は、ピアノ教室が悩みの突破口になりました。ピアノを習い、それを披露することで自己肯定感を高めることができました。

 

内気になりがちなのは、他の子と同じようにできない自分を責めてしまい、自信がなくなってしまっているからです。何か得意なものを1つ持てば、「自分には○○がある」と自信を持つことができますし、それをきっかけに人との交流も生まれて、徐々に処世術を学んでいきます。

 

一方で、そういった自然に任せた適応には限界があります。障害を持つ以上、脳の構造に健常者と差異があり、科学的な対処が必要であることを忘れてはいけません。アスペルガーの場合は、自分を繕って周りに合わせるためうつ病などの二次障害が起きやすいのです。

 

本人も親も専門的知識を持つとともに、具体的な人間関係の具体的な場面別の対処方法を臨床心理士等の専門家のアドバイスを受けマニュアル化することで乗り越えることができました。

 

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