【社会福祉士】ソーシャルワーカーを支えるスーパービジョンの歴史と主な機能
問題や課題を抱える方々から相談を受けるソーシャルワーカーですが、支援の方針など悩むことも多くあります。ソーシャルワーカー自身とその状況を理解しており、支えてくれる人がスーパーバイザーであり、問題への助言や課題解決方法のアドバイスなどの行為がスーパービジョンです。
社会福祉士に興味がある方に読んでもらいたい1冊です。本HPで連載していた事例を紹介しています。施設相談員がメインの事例となっており、介護福祉士と何が違うのか、どんなことをするのかよくわかると思います。小説風に書かれているので読みやすいかと思います。
スーパービジョン登場の背景
ソーシャルワーカーは生活に問題や課題を抱える方を対象に、それらの解決を目指し、クライエントをエンパワメントしたり関係機関や多職種との調整を行います。
しかし、ソーシャルワーカー自身も様々なストレスや課題に直面することがあります。時にはクライエントの辛い状況を知り、自身も辛い気持ちになることや、必死に支援したとしても上手くいかない場合もあります。多くの情報から迷い自身が何をすべきかわからなくなることもあります。
ソーシャルワーカー自身とその状況を理解しており、支えてくれる人が必要です。それが問題解決の専門的方法を習得でき、教えてくれる人がスーパーバイザーであり、この行為がスーパービジョンです。
スーパービジョンという言葉には指導、助言、管理といった意味を含んでおり、1900年代初頭にドイツで精神分析の分野に導入され、臨床医の技術の向上を目的に実施されるようになりました。その後、米国への精神分析の普及とともに米国において定着しました。
このスーパービジョンは、臨床実践家であるバイジーが指導者とするバイザーから教育・指導を受ける過程ととらえられます。そこでは、経験豊富な指導者がバイザーとなり、実践家であるバイジーとの定期的な面接や継続的な訓練を通じて専門的スキルを向上させることが目的です。米国では、臨床ソーシャルワークが心理臨床的なアプローチに傾倒していたことで、ソーシャルワークにおけるスーパービジョンにもこの考え方が浸透し、日本にも同様に波及しました。
心理臨床のように、専門資格の取得に際して認定されたバイザーから一定時間以上のスーパービジョンを受けていることや、資格を取得後にも、定期的なスーパービジョンを公認資格の維持要件としている場合も多くあります。英国や北欧諸国では、心理臨床以外にも作業療法士、言語治療士、音楽療法士などの資格更新において一定時間のスーパービジョンを受けた経験が要件とされています。これは対人支援の専門職がより良い実践を続けていくためには、スーパービジョンが不可欠と考えられているからです。
日本においては、1990年の福祉関係八法改正により施設福祉から在宅福祉を軸とした社会福祉の再編成が行われ、近年の制度上の変化による影響から保健・医療・福祉分野におけるソーシャルワーク実践の価値・機能・質は大きく変化しました。そして、多様化するニーズに対応するために、より高度な知識と専門性を有する人材の養成と実践的なスーパービジョンが求められるようになりました。
古くから実践の質を高める方法としてスーパービジョンが認識されていたものの、社会福祉士の養成課程やより専門的な力を付けるための必要不可欠な過程とされたと言えるのは近年です。
社会福祉士の養成課程では、2009年度より始まった新カリキュラムにおいて実習教育の場における実習スーパービジョン実践が位置付けられた。実習スーパービジョンは基本的には現場におけるスーパービジョンと同じと言われています。
また、2007年の社会福祉士及び介護福祉士法改正において「より専門的対応ができる人材を育成するため、専門社会福祉士及び専門介護福祉士の仕組みについて早急に検討を行う」ことが国会において付帯決議され、それを受けて認定社会福祉士制度の創設により2014年4月から認定社会福祉士が誕生しました。この認定社会福祉士になるためには、スーパービジョンが必須であり、スーパービジョンを福祉現場に普及させるための仕組みが進められています。
スーパービジョン機能の具体例
スーパービジョンには管理的機能、教育的機能、支持的機能の3つの機能があります。
管理的機能
管理的機能とは、職場の上司としての機能であり、管理者として部署を統括する、適切な人員配置を行う、スタッフが適切に業務を行っているか監督・管理・指導・調整する、スタッフを守る、組織を変革するといったスタッフの適切な業務遂行を担保するための幅広い業務が含まれています。
事業計画に応じた人員配置を行いながらも、スタッフの力量や状況に見合った業務を割り当て、それらが適切な業務や役割を遂行しているか評価する。時と場合によっては、働きやすく効率的に機能できる組織へと変革します。また、スタッフが利用者や家族、関係者から苦情や批判、攻撃をされている場合には、スーパーバイザーが間に入ることで衝撃を和らげる役割を果たします。
教育的機能
効果的・効率的・倫理的に業務を遂行できるように、専門職としての知識・技術・価値・倫理をスタッフが習得して専門性を高められる様に教育することです。理念や知識・技術を伝える、考えて実践する機会を設ける、振り返る機会を設ける、フィードバックするといったことを行います。
組織の理念や方針や専門職の価値について説明し、時には自ら実践します。それでいてスタッフにも考える時間と実践する機会を与えて、サポートを受けながらも徐々に自立していけるようにします。実践後は振り返りを行い、実践の経過と内容、今後課題や方向性について考えます。その後スーパーバイザーからもスタッフについての課題や改善点、改善方法を具体的に伝えて、今後の取り組みを明確にできるように支援します。
支持的機能
職務に関するストレスや悩みを傾聴し、サポートするといった心理的・情緒的に消耗するスタッフを支える機能であり、自己覚知を促すといった自己への気づきを得るための機能でもあります。
具体的には、対応で悩んでいる際やクライエントの過酷な現状を聞き自らも苦悩している場合に、共感的に理解して心理的にサポートします。また、クライエントへの不適切な言動が見られる場合には、自分の言動を客観的に認識するように促します。
■参考文献
①社会福祉士養成講座編集委員会編『相談援助の理論と方法Ⅰ』中央法規