社会福祉士コラム

【社会福祉士】地域や生活空間へ出向いて相談援助を展開するアウトリーチの必要性は?

この記事では、児童虐待を中心にアウトリーチの必要性を述べる。考え方の一例として参考にしてください。

アウトリーチはなぜ必要か?

アウトリーチはクライエントから相談されることを待つのではなく、地域や生活空間へ出向いて相談援助を展開することである。具体的な機能としては、ニーズの掘り起こし、情報提供、サービス提供、地域づくりが挙げられる。

対象となるのは、自ら援助を求めてないクライエントであり、非自発的クライエントや接近困難なクライエントと呼ばれる。我が国では申請主義が採用されており、そのような中では援助を求めて来ないクライエントを援助へと結びつけることは難しい状況である。しかし、実態としてこのような状態にある方は、生活維持に必要な社会との繋がりを持っていない、自らが問題を訴える能力がない、問題の訴え先を知らないということもあり、彼らと援助関係を結んでいくことはソーシャルワーク実践において重要なことである。

児童虐待事例にみるアウトリーチの必要性

このアウトリーチの必要性を述べるにあたり、昨今ニュースでも大々的に取り上げられる児童虐待について取り上げたい。児童虐待が報道されるケースとしては、子どもが死に至ってしまった事件が多く、世間の反応としては「なぜもっと早く対応できなかったのか?」ということである。

事件の多くは全く虐待傾向がなかった家庭において数日の間に死に至るわけではなく、日常的な虐待があり、それの結果として死に至ってしまう。その場合、子どもが幼稚園生、保育園生、小学生であれば何等かの社会との接点があるため、異常に気付くことは出来ただろうというのが一般的な反応である。また、その家庭の周りに住む近隣住民も異常を感じていることもあり「子どもの泣き声が毎日聞こえていた」などの声が事件後に報道されることもあり、近隣住民が非難の的とされることもある。そして、恐らく情報が共有されていたと考えられる児童相談所等の機関についても同じである。

そうであれば、アウトリーチで問題のある家庭を日ごろから訪問し、援助関係を作れば良いと思われがちだが、担当ソーシャルワーカーが全ての地域を回り問題の掘り起こし、汲み上げることは不可能である。

ここでの問題点は、それぞれ地域や学校などで把握している問題や課題を共有する仕組みが脆弱であり、ニーズのキャッチが遅れてしまっていると思われることである。特に地域で把握した問題や課題は、住民はどこに連絡すれば良いのか、どの程度の内容なら共有すれば良いのかという点で疑問があり、しかも警察や行政などバラバラに情報提供した場合には情報を集約できず対応が遅れる可能性もある。

そのため、一例として住民の身近な相談先として地区担当の民生・児童委員とすれば、警察や行政などよりはハードルは下がり、多少の気になる点であっても気軽に共有することができる。そして、ソーシャルワークワーカーは普段から各地区の民生・児童委員と顔の見える繋がりを構築しておくことで、地域での問題を得やすくなり、それが非自発的クライエントのキャッチへと結びつけることができると考える。また、それらの情報や各機関で得た情報は虐待防止ネットワークなどを活用して関係機関やそれぞれの専門職と共有することも必要である。

ソーシャルワーカーはその情報をもとに家庭を訪問し、援助関係を結ぶことで児童虐待等の問題へ早い段階で介入が可能となり、最悪の結果を回避することにも繋がると考えられる。

迅速に情報を汲み上げて、共有する仕組みを強化することも含めて、それこそが非自発的クライエントを地域に出向いて把握するだけではない、地域づくりといった機能を持つアウトリーチの必要性であると考えられる。

参考文献

1.新・社会福祉士養成講座7 相談援助の理論と方法Ⅰ 中央法規出版

2.新・社会福祉士養成講座8 相談援助の理論と方法Ⅱ 中央法規出版

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