基本的な財源の仕組み
日本の社会保険制度は、主に 社会保険料 によって成り立っています。ただし保険料だけではなく、税金の投入 や 利用者負担、さらに 積立金の運用益 も重要な財源です。
保険料や税金は特別会計に集められ、そこから給付に充てられます。余剰が出れば積立金となり、その運用益も制度の収入になります。一方、利用者負担(医療費の自己負担や介護サービスの一部負担など)は、保険者ではなく、直接サービスを提供する病院や介護事業者に支払われます。
制度ごとに仕組みは異なりますが、ここでは大きな考え方を整理しておきましょう。
保険料の2つの形:定率と定額
社会保険料には大きく分けて 定率保険料 と 定額保険料 があります。
- 定率保険料:所得に応じて一定率を課す。例:厚生年金・健康保険(協会けんぽ、組合健保)。
- 定額保険料:所得に関係なく一定額。例:国民年金。
ただし実際の制度は単純ではありません。
国民健康保険は「定額(応益負担)」+「所得比例(応能負担)」を組み合わせています。介護保険は所得段階ごとの定額に近い形です。
👉 ポイント:
- 定率は「応能負担(能力に応じた負担)」、
- 定額は「応益負担(受ける利益に応じた負担)」に近いと理解します。
厚生年金は保険料と給付が連動するため「応益的要素」が強く、国民年金は納付月数に比例して給付が決まるため典型的な応益負担です。
被用者保険と事業主負担
社会保険の始まりは「被用者保険(労働者保護)」でした。ここでは賃金に一定率を課す定率保険料が基本です。
- 厚生年金・健康保険:標準報酬制(賃金を一定額ごとに区分して算定)、上下限あり。
- 雇用保険・労災保険:賃金総額に対して定率で課す。
保険料は原則「労使折半」ですが、労災保険は事業主が全額負担します。
ではなぜ、一般の病気や高齢化など事業主に直接責任がない事由にも事業主負担があるのでしょうか?
事業主負担の理由
- 事業活動起因性
労働環境や雇用調整が健康悪化や失業に影響することがあるため。 - 生産性の向上
リスクが保障されることで労働者は安心して働ける。結果的に企業収益につながる。 - 被用者の負担軽減
労働者の負担能力には限界があるため、事業主も負担することで安定的財源を確保できる。
👉 雇用する以上、事業主が社会的責任として保険料の一部を担うことは当然と考えられています。
国民皆保険・皆年金と地域保険
1961年に国民皆保険・皆年金が実現しました。その際、職域保険に入れない人を対象に 地域保険 が導入され、国民年金と国民健康保険が始まりました。
- 国民年金:完全に個人単位の定額保険料。ただし免除制度あり。免除すれば将来の年金も減額されるため応益負担的。
- 国民健康保険:世帯単位で加入。1人あたりの定額(応益分)+所得比例の定率(応能分)。軽減措置もあり、応能負担的な性格が強い。
高齢者向け制度(介護保険・後期高齢者医療制度)
- 介護保険:
65歳以上(第1号被保険者)は所得に応じた段階的定額。
40歳以上(第2号被保険者)は医療保険料に上乗せ。 - 後期高齢者医療制度:
75歳以上は原則個人単位。定額+所得・資産に応じた定率。
費用は「本人負担1割」「現役世代の支援金4割」「税5割」でまかなわれています。
👉 そのため「純粋な社会保険方式ではない」とも言われます。
まとめ:試験対策の押さえどころ
- 財源は 保険料+税+利用者負担+運用益。
- 保険料には 定率(応能) と 定額(応益)。
- 被用者保険は労使折半(労災のみ事業主全額)。
- 国民皆保険の実現で地域保険(国保・国民年金)が導入。
- 高齢者制度は「社会保険方式+公費投入」の折衷型。
👉 社会福祉士受験では、「どの制度が定率か定額か」「事業主負担の理由」「地域保険の仕組み」を整理しておくことがポイントです。