介護職から相談員へ、理想と現実のギャップ(後編)
前回、理想と現実のギャップ前編を書きました。今回は後編をお届けします。ギャップと聞くと悪いことばかり想像しますが、現在相談員6年目の私は、相談員の仕事が大好きです。なので安心して読んでくださいね。
社会福祉士に興味がある方に読んでもらいたい1冊です。本HPで連載していた事例を紹介しています。施設相談員がメインの事例となっており、介護福祉士と何が違うのか、どんなことをするのかよくわかると思います。小説風に書かれているので読みやすいかと思います。
【huuriの自己紹介】
通所リハビリ施設で10年介護の仕事をしており、うち6年は相談員を兼務しています。主な仕事内容は・契約・会議出席・現場管理・稼働管理・経営です。
【ギャップ4 介護は包括的ケアが大切】
私は大学を卒業してからすぐに介護職につきました。ちなみに大学は介護とは関係ない所を卒業しました。なので私の知識が乏しいだけかもしれませんが。
介護現場で働いていたときには知らなかった制度や仕事内容、世界観がたくさんありました。
包括的ケアが大切ということを別の言い方にすると、「自分の施設のサービスは、メインではなく歯車だった」です。わかりますかね?
相談員になった当初、右も左も分からない私のところに、介護職・看護職・リハビリ職員・利用者様・施設など、いろんなところからいろんな情報や意見が集まってきます。「この利用者様は危ないから、送迎は車椅子に変更したほうがいい」「この薬を飲んでるから調子が悪いんだと思う」「病状がすすんでるから、もうここでは厳しい」など。
その集まった意見のほとんどは、利用者様のための意見です。私は「ここの施設に預けてもらっているんだから、自分がなんとかしたほうがいい」と、送迎を車椅子で行うことを決定したり、送迎時に家族に薬や病状が進んでいる話をしました。そしてそのときに、その利用者様の送迎にはヘルパーさんが関わっていることや、薬のことは訪問看護さんが調整していること、病状については病院と家族で話をしていることを知ります。
また、ケアマネさんに報告せずに動いたため、あとからケアマネさんより「報告してほしかったです」と言われたこともあります。
介護は「多職種共同」です。一人の利用者様の生活のために、ケアマネまたは包括支援センターが中心となり、多職種が情報とできることを持ち寄り、話し合い、実行し、観察し、また情報交換をし・・・これが繰り返されるのが包括的ケアです。求められているのは、個人でなんとかするという考え方よりも(これが大切なこともありますが)多職種とうまく連携を取り、利用者様の生活が安定するように、観察と支援を繰り返す仕組みづくりに貢献できる相談員であることだと、今は思っています。難しいですけどね。報連相はとっても大切だなぁと感じます。
【ギャップ5 いろんなご家族がいる】
介護の現場で働いていると、自分たちの中での「常識」みたいなのができてきませんか?例えば・このくらいの状態になったら車椅子でしょ・これはもう自宅で介護できる状態じゃないよね・布パンツはそろそろ大変だから履く対応の紙パンツになるよね。・いやーここくらいまでは家族がやるべきでしょ。・・・のような。
これらの言葉は、過去私が介護職をしていて、一度は思ったことがあることですし、相談員になってから実際介護職から結構言われた言葉でもあります。介護職の仕事は専門性が高い反面、外にあまりでないので、どうしても情報が偏りやすいなぁと思います。私が相談員になって一番大変だったことは、この「現場」と「外部(ケアマネジャーや家族)」の間に立つことでした。
介護職をしていたときは、漠然と常識だと思っていましたが、実際家族を目の前にして、同じことが言えるかというと、これは難しかったです。
想像すれば容易いのですが、私達からすると何十人の中の一人である利用者様でも、家族からしたら自分の母親だったり、父親だったりするわけです。布パンツから紙パンツに変えることも「私のお母さんが紙パンツを履くことになるなんて」と涙される方もいれば、逆に施設入所に対して「早く入れてください」というご家族もいました。細かく状態を知りたい家族もいれば、ほとんど関わっていない家族もいます。家族の介護に対する気持ちは十人十色。そこに私達の中でできた常識を、なんの気なしに投下するのは、さすがにできません。でもそれは、家族を目の前にして、家族の気持ちを聞いて初めて実感できました。
私は介護職上がりの相談員ですので、現場の気持ちがよくわかります。実際現場からすると、無理難題を言う家族やケアマネジャーは、多いと思います。相談員はその都度、現場に頭を下げるか、ケアマネジャーに頭を下げるか、ご家族に謝るかなど、選択の連続です。厳密に言えば仕事なので、大変なケースであっても現場が受けていくべきなんですけどね。正直人数もギリギリでやっている施設や、リスクヘッジを考える施設では、困難ケースは断っていくことも仕事のうちではありますし。
大変な面もありますが、私はこの現場と外部をつなげる仕事が、相談員の仕事の中で一番やりがいがあるのではないかと思っています。うまく行ったときは達成感があります。まさに縁の下の力持ちですね。
【最後に】
私が介護職のときに想像していた相談員の仕事より、実際に行うと大変なこともたくさんありました。しかし同時に確実にスキルアップしていると実感しています。これを読んでくださった相談員の方も、今よりレベルアップできるよう、一緒に精進していきましょう。