この記事では、現代日本の家族の在り方を家族関係の視点から外観し、今後家族関係はどのように変化していくのか、またその変化が家族にどのような問題を起こすのかついて述べる。考え方の一例として参考にしてください。
これまでの家族の変化
現代の日本において家族関係をみる上で、まずは家族を構成する世帯の変化や家族に関する意識をとらえる必要がある。
まず世帯に関して1世帯(入所施設等で生活する世帯(施設等世帯)を除く一般世帯)当たり人員の推移は1990年の2.99人から2015年の2.33人まで減少し、この間、世帯人員1人、2人の世帯が増加してきた。世帯類型では単独世帯、夫婦のみ世帯、ひとり親と子どもからなる世帯の構成割合が増加しており、2040年まで同様の傾向が続くと見込まれており、2040年には単独世帯は全体の39.3%に達すると推計されている。
この単独世帯増加の背景として、未婚のまま親元を離れたり親と死別したりすることや配偶者と二人の世帯で離別・死別することなどが考えられる。
世帯の変化だけでなく時代と共に家族に関する意識の変化も見られており、内閣府「高齢者の生活意識に関する国際比較調査」において親の世代に対して子どもや孫とのつきあい方を尋ねた所、1990年代では半数以上が「子どもや孫とは、いつも一緒に生活できるのがよい」としていたが、2020年では「子どもや孫とは、ときどき会って食事や会話をするのがよい」が56.8%を占めるようになっている。
家族による介護の担い方についての意識は変わってきており、これまでの調査で高齢期の生活に関し、病気などの介護について「重要な役割を果たすもの」として7割以上の人が「家族」としていた。
しかし、2016年に「どこでどのような介護を受けたいか」を尋ねた「高齢社会に関する意識調査」では、「家族に依存せずに生活ができるような介護サービスがあれば自宅で介護を受けたい」が37.4%で最も多くなっている。
そのほかにも2017年の国立社会保障・人口問題研究所「生活と支え合いに関する調査」では、高齢単独男性世帯や高齢単独女性世帯では会話をできる相手や日頃のちょっとした手助けで頼れる相手が少ないなどの結果が得られている。
ここまで世帯の変化や家族に関する意識を概観した。世帯の小規模化が年々進んでおり、特に単独世帯が増加している。加えて単独世帯においては他人との関わりも希薄化しているような状況である。今後もこの世帯の小規模化と家族関係の希薄化が進行すると考えられる。
変化と課題
これらの変化がもたらす課題として、森岡・望月(2009)が指摘する危機対処能力の弱化が挙げられる。成員の人数が少なくなれば病気や有事の際などに手助けしてもらうことが難しくなることは明白であり、さらに人間関係が希薄化しているため頼る人もいないような状態である。また高齢化も進行することになり、どの世帯類型においても人の手を借りなければならないことが増えることも想定される。この危機対処能力の弱化をどこかで補完しなければならないと考える。
この問題に対して社会福祉士としてできることとして、地域で危機対処能力の弱化を補完できるよう支援を行うことが想定される。アウトリーチにより単独世帯など社会的につながりの少ない方々の問題の掘り起こしに対して積極的にアプローチを行い、社会との関わりを作る役割を担うことが考えられる。また、必要な関係機関とつなげることや近隣住民とのネットワークづくりなども含めてコーディネーターとして参加することで、地域での協力体制を構築し、普段からの困りごとを解決する関係性を地域で実現することで、危機対処能力の弱化を補完することが可能であると考える。
参考文献
- 厚生労働省(2020)『令和2年版厚生労働白書』
- 内閣府(2021)『第9回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査』
- 内閣府(2016)『平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査結果』
- 国立社会保障・人口問題研究所(2017)『生活と支え合いに関する調査』
- 森岡清美、望月嵩(1997)『新しい家族社会学』培風館
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