社会福祉士コラム

【療育体験】障害者のいる家庭が不幸な家庭だとは思わない

障害の種別

重度知的障害を伴う自閉症

 

障害者のいる家庭が不幸な家庭だとは思わない

とても可愛い子でしたが、2歳を過ぎても言葉を覚えず、あまり目が合いませんでした。自分の名前も覚えられず、読んでも振り向かないことが多かったです。食べ物の好き嫌いも激しく、お気に入りのヨーグルトしか食べない日もありました。3番目の子どもでしたので、他の子との違いにはすぐ気が付きましたが、しばらくは現実を直視できませんでした。

 

幼稚園に入園する前に病院で診てもらって、自閉症だと診断されました。上のお姉ちゃんたちに話すと、ショックを受けていました。

 

今、子どもは16歳になりました。大変なことが多かったのですが、嬉しかったことも数えきれないほどあります。

 

重度の知的障害を伴う自閉症なので、基本的には施設に預かっていただき、週末に迎えに行って一緒に過ごします。何歳になっても、「ママ」とも「お母さん」とも呼べませんが、迎えに行くと嬉しそうに駆け寄ってきます。覚えてくれていると思うと、自分が守らなければいけないなと思います。

 

上のお姉ちゃんたちのことも、「よく会う優しい人」と認識しているようです。子どもの頃から食べることが大好きなので、ときどき心配になるほどの量を食べます。でも、たくさん食べている姿を見るのが幸せです。偏食だった時期があるので、いろいろなものを食べてくれると安心します。甘いものが好きなので、ついデザートをあげすぎてしまうのが悩みです。

 

施設のお祭りでは、ダンスをしたり楽器を演奏してくれたりします。とても可愛くて涙が出ます。大人の体へと変化する時期で、ホルモンバランスが崩れてイライラしてしまい、他害(暴力)が見られることもありますが、私には手を上げたことがありません。言葉にはできませんが、私のことを好きでいてくれるのだと思います。

 

たまにお漏らしをしたり食べ物を口から吐き出したりして手がかかる分、些細なことで幸せを感じます。1日の終わりに、「今日はおとなしかった」「今日はきちんとトイレに行けた」と思い返し、眠る子の顔を見つめます。1週間に2日しか会わないので、大変でも我慢できます。いつも見てくれている施設の方には感謝しかありません。

 

周りから見れば障害者のいる家庭は不幸なのかもしれませんが、私は自分が不幸だと思ったことはありません。

 

障害のある子どもを産んでから、人と人とのつながりを実感しています。子どものことを気にかけてくれる人、施設を探してくれる人、子どもが原因で起きたトラブルに向き合ってくれる人、感謝してもしきれない人にたくさん出会いました。

 

施設の方は、ただ仕事だから世話しているのではなく、一人一人の子どもに愛着を持って、少しでも楽しく過ごせるように頑張ってくれています。そうした姿に励まされて、これからも頑張ろうと思えました。

 

また、障害のある子がいることで家族の絆が深まったようにも感じます。上のお姉ちゃんたちはもう自立して仕事をしています。忙しいのに、妹に何かあると助けに来てくれます。夫も、よく手助けしてくれます。子どもを病院に連れて行くときなど、抵抗するため一人では不安ですが、家族が一緒に来てくれるので助かります。

 

次の休みには、子どもを連れて近くの山に登りに行く予定です。今までも何度か登山に連れて行きました。人のいる場所には尻込みして緊張感を表現しますが、山に登るときはリラックスして見えます。清々しい気分になるので、アウトドアで楽しむのが好きです。たまに家族みんなで行きます。

 

知的障害のある彼女の中に、どのくらい「思い出」が残るのかどうか分かりませんが、これからも幸せな時間を重ねていきたいです。

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