社会福祉士の実習では、実習が始まる前に「実習計画」を作成します。
しかし、実習計画について、
「学校のカリキュラムに入っているから作るもの」
「とりあえず提出しなければならないもの」
「何を書けばよいのか分からないけれど、形だけ整えるもの」
と感じている方も多いのではないでしょうか。
たしかに、実習計画は学校から提出を求められる書類の一つです。
そのため、どうしても“課題”や“提出物”として捉えられがちです。
しかし実際には、実習計画には思っている以上に大切な意味があります。
実習計画は、社会福祉士実習を「行って終わり」にしないためのものです。
せっかく長期間、福祉の現場で学ぶ機会があるのですから、ただ現場に行き、言われたことを見て、体験して終わるだけではもったいありません。
実習計画は、自分が何を学びたいのか、どのような視点で現場を見たいのかを整理し、実習をより意味のあるものにするための大切な準備です。
実習計画は「実習を自分の学びに変えるための設計図」
社会福祉士の実習では、現場でさまざまな経験をします。
利用者さんとの関わり、支援者の動き、多職種との連携、記録、面談、会議、地域とのつながりなど、実習先によって学べることはたくさんあります。
ただし、何も考えずに実習へ行くと、目の前の出来事をただ眺めるだけになってしまうことがあります。
「今日は面談を見学しました」
「利用者さんと関わりました」
「職員さんの話を聞きました」
このような経験はもちろん大切です。
しかし、それを自分の中で深めるためには、
「なぜそのような支援をしていたのか」
「社会福祉士としてどのような視点が必要なのか」
「利用者理解のために何を見ればよいのか」
「自分は何に疑問を感じたのか」
という視点が必要になります。
実習計画は、その視点をあらかじめ持つためのものです。
つまり、実習計画とは、単なる予定表ではありません。
実習を自分の学びに変えるための設計図です。
実習計画がないと「行って終わり」になりやすい
実習は、日々の流れがとても早く進みます。
初日は緊張しているうちに終わり、少し慣れてきた頃には見学や体験が増え、気づけば実習後半になっていたということもあります。
その中で、実習計画が曖昧なままだと、
「いろいろ経験したけれど、何を学んだのか整理できない」
「実習記録に何を書けばよいか分からない」
「最終的に自分の課題が見えない」
「実習後の振り返りが浅くなってしまう」
ということが起こりやすくなります。
もちろん、実習に行くだけでも得られるものはあります。
しかし、社会福祉士を目指す実習として考えるなら、ただ現場を体験するだけでなく、その体験を自分の理解や成長につなげることが大切です。
実習計画を作ることで、実習中に見るべきポイントや考えるべきテーマが明確になります。
その結果、日々の実習記録も書きやすくなり、実習後の振り返りも深まりやすくなります。
例文あり!実習記録の書き方の6つのコツとは?書き方の観点をお伝えします!
自分の疑問を解決するためにも実習計画は大切
実習は、福祉現場の方から直接話を聞ける貴重な機会です。
普段の授業やテキストだけでは分からないことも、現場の支援者から話を聞くことで具体的に理解できることがあります。
たとえば、
「利用者さんとの距離感はどのように考えているのか」
「支援方針はどのように決めているのか」
「本人の意思と家族の意向が違うとき、どう考えるのか」
「多職種連携では、社会福祉士はどのような役割を果たしているのか」
「制度と本人の生活の間にズレがあるとき、どう支援しているのか」
こうした疑問は、実習だからこそ聞けるものです。
しかし、実習中にその場でいきなり質問を考えるのは意外と難しいものです。
緊張していたり、忙しそうな職員さんに遠慮してしまったりして、聞きたいことを聞けないまま終わってしまうこともあります。
だからこそ、実習計画を作る段階で、自分が何を知りたいのか、どのような疑問を持っているのかを整理しておくことが大切です。
実習計画に自分の疑問や学びたいことを入れておくことで、実習中に意識して観察したり、実習指導者に質問したりしやすくなります。
実習指導者に自分の思いを伝えるためのものでもある
実習計画は、自分のためだけのものではありません。
実習指導者に、自分がどのような思いで実習に臨むのかを伝えるためのものでもあります。
実習指導者は、実習生が何を学びたいのか、どのようなことに関心を持っているのかを知ることで、実習中の関わり方や助言の仕方を考えやすくなります。
たとえば、実習生が
「相談援助の場面を学びたい」
「利用者理解を深めたい」
「地域との連携について知りたい」
「社会福祉士の専門性を現場でどう発揮しているのか学びたい」
と考えていることが分かれば、実習指導者もそれに合わせて話をしてくれたり、見学の機会を調整してくれたりするかもしれません。
もちろん、実習先の状況によってすべてが希望通りにできるわけではありません。
それでも、自分の関心や目標を伝えておくことには大きな意味があります。
実習計画は、実習指導者との最初のコミュニケーションツールでもあるのです。
実習計画には「自分の言葉」で書くことが大切
実習計画を書くとき、きれいな言葉や専門用語を使おうとしすぎる必要はありません。
もちろん、社会福祉士実習として適切な表現に整えることは大切です。
しかし、それ以上に大事なのは、自分が本当に何を学びたいのかを自分の言葉で考えることです。
たとえば、
「利用者理解を深めたい」
と書くだけでは、少し抽象的です。
そこに、
「利用者さんの言葉や行動の背景にどのような生活課題や思いがあるのかを考えながら関わりたい」
と書くと、学びたいことがより具体的になります。
また、
「社会福祉士の役割を学びたい」
という目標も、
「多職種の中で社会福祉士がどのように利用者の生活課題を捉え、支援につなげているのかを学びたい」
とすると、実習中に見るべきポイントが明確になります。
実習計画は、立派なことを書くためのものではありません。
自分の学びを深めるために、実習で何を見て、何を考え、何を質問するのかを整理するためのものです。
実習計画を作ると実習記録も書きやすくなる
実習計画は、実習記録ともつながっています。
実習記録を書くときに困りやすいのが、
「何を書けばよいのか分からない」
「感想だけで終わってしまう」
「学びが浅く見えてしまう」
という悩みです。
しかし、実習計画で目標や視点が整理されていると、実習記録も書きやすくなります。
たとえば、実習計画に
「利用者さんの生活背景を理解する視点を学ぶ」
という目標を書いていた場合、実習記録では、
「今日の関わりの中で、利用者さんの生活歴や家族関係が現在の困りごとに影響している可能性を考えた」
「職員さんは本人の発言だけでなく、表情や行動、これまでの経過も踏まえて支援を考えていた」
「自分はまだ目の前の言葉だけで判断しがちなので、背景を想像する視点を持ちたい」
というように、目標に沿って振り返ることができます。
実習計画があることで、日々の体験を「学び」として整理しやすくなるのです。
例文あり!実習記録の書き方の6つのコツとは?書き方の観点をお伝えします!
実習計画は途中で変わってもよい
実習計画というと、一度作ったら最後までその通りに進めなければならないと思うかもしれません。
しかし、実習中に学びたいことが変わることは自然なことです。
実際に現場に入ってみると、事前に想像していたことと違うこともあります。
「相談援助を中心に学びたいと思っていたけれど、地域連携の重要性に気づいた」
「制度について学ぶつもりだったが、利用者との関係づくりの難しさに関心が向いた」
「実習前は分からなかった社会福祉士の役割が、現場を見て少しずつ見えてきた」
このように、実習の中で関心や課題が変化することは、むしろ大切な学びです。
実習計画は固定されたものではなく、実習を通して深めていくものです。
最初に立てた計画をもとにしながら、実習中に気づいたことを加え、必要に応じて視点を修正していくことが大切です。
まとめ:実習計画は、実習を意味あるものにするための準備
社会福祉士の実習計画は、学校に提出するためだけの書類ではありません。
実習を「行って終わり」にしないために、自分が何を学びたいのかを整理する大切な準備です。
実習計画を作ることで、
- 実習で見るべきポイントが明確になる
- 自分の疑問を整理できる
- 実習指導者に自分の思いを伝えられる
- 実習記録が書きやすくなる
- 実習後の振り返りが深まりやすくなる
というメリットがあります。
社会福祉士の実習は、現場でしか学べないことを学ぶ貴重な機会です。
現場の方から話を聞くことも、実際に支援の場面を見ることも、利用者さんと関わることもできます。
だからこそ、せっかくの実習をただの体験で終わらせるのではなく、自分の中にしっかり落とし込むことが大切です。
そのための第一歩が、実習計画を作ることです。
実習計画を「面倒な提出物」としてではなく、実習を意味あるものにするための設計図として捉えてみてください。
そうすることで、実習での一つひとつの経験が、社会福祉士としての学びにつながっていくはずです。