社会福祉士と「家族のあり方」
社会福祉士の試験では「経済」と並んで「家族の変化」も大切なテーマです。
なぜなら、社会保障制度は家族の姿を前提に設計されてきたからです。かつて一般的だった「夫が働き、妻は家庭を守る」という家族像が崩れ、共働きや老親扶養の意識が変わるにつれて、社会保障の仕組みも修正を迫られてきました。
つまり、社会保障を理解するためには「家族の変化」を学ぶことが欠かせません。
戦後の家族モデルと制度
制度創設期の日本は「男性が稼ぎ手、妻は専業主婦」という前提で社会保障が組み立てられました。
夫が勤め先で加入する健康保険には家族も含まれ、妻や子どもが病気になれば夫の保険から給付を受けられる仕組みでした。厚生年金も夫婦単位で設計されており、老後は夫の年金で生活することが想定されていました。夫が亡くなれば遺族年金が妻に支給されましたが、離婚すれば妻は無年金になるリスクもありました。
このため後に「基礎年金」が導入され、定額部分は個人単位へと切り替えられます。ただし報酬比例部分を引き継いだ厚生年金は依然として世帯単位で、第3号被保険者制度が残りました。夫に扶養される妻は保険料を払わずに年金がつくため、公平性の議論を呼ぶことになります。
男性稼ぎ主モデルの揺らぎ
「夫が外で働き、妻は家庭を守る」という仕組みは「男性稼ぎ主モデル」と呼ばれ、西欧の制度設計にも共通していました。日本も長くこのモデルを前提にしてきましたが、社会意識は徐々に変わっていきます。
1979年の調査では、実に7割以上が「夫は外で、妻は家庭」という役割分担に賛成でした。ところが2000年代に入ると、反対の割合が賛成を上回るようになります。2019年には反対が約6割に達し、固定的な性別役割分担は時代に合わなくなったことが数字に表れています。
実態面でも、1980年に1,100万世帯を超えていた「夫が働き妻は無職」という片働き世帯は減少し続け、1992年には共働き世帯数が逆転。2019年には共働きが約1,250万世帯と倍増する一方、片働きは600万世帯を切りました。まさに社会の家族像そのものが変化してきたのです。
老親扶養の意識変化
もう一つ重要なのは「老親を誰が支えるのか」という意識の変化です。1950年当時は「老後は子どもに頼る」と答える人が過半数でした。ところが1960年代に国民皆年金が実現すると、「老後は子どもに頼らない」という回答が多数派になり、その差は年々広がっていきました。
1980年の調査では、公的年金を主な収入とする高齢者は35%ほどでしたが、2015年には70%を超えています。逆に「子どもからの仕送りが主な収入」という人は15%から1%未満にまで減少しました。
つまり、現代の高齢者の生活は、公的年金制度を抜きにしては語れないのです。
まとめ:家族の変化と社会福祉士
社会保障制度は「家族のあり方」を前提に設計され、その変化に合わせて修正を重ねてきました。専業主婦モデルから共働き時代へ、子ども扶養から公的年金へ――。こうした流れを押さえることは、社会福祉士にとって不可欠です。