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社会福祉士受験対策|イギリスに見る社会保障の始まりとベヴァリッジ報告まで

社会保障という考え方の誕生

「社会保障」という言葉は20世紀になって生まれた新しい概念ですが、実際には古くから「生活に困った人をどう支えるか」という制度は世界各地にありました。国ごとの経済や文化に応じて仕組みが異なりますが、現代の制度の原点はヨーロッパにあります。

特にイギリスは産業革命がいち早く進んだため、都市には多くの労働者と同時に大量の貧困層が生まれました。そのため国家が「貧困対策」に取り組まざるを得ない状況が生まれ、ここから近代的な社会政策の歩みが始まったのです。

16世紀〜17世紀:救貧法の時代

人口が急増した16世紀のイギリスでは、貧困層が大きな社会問題となりました。そのため貧困を救済する法律がいくつも制定され、1601年にはそれらを統合した「エリザベス救貧法」が成立します。

この制度では、教区ごとに「貧民監督官」を置き、地域の資産に課税して貧困対策を行う仕組みを整えました。具体的には、働ける人には仕事を与え、賃金を補助し、高齢者や障害者には救貧院を建てて保護しました。これは「労働力も国家の財産」という重商主義的な考えに基づいた、人道的で体系的な制度でした。

18世紀〜19世紀前半:新救貧法とワークハウス

しかし18世紀以降、救貧制度には問題も出てきます。都市部で失業者が増えると賃金補助が膨らみ、財政を圧迫。労働移動を阻害するなど産業発展の妨げにもなりました。

1834年には「新救貧法」が制定されます。この法律では、貧困は「勤勉さの欠如」に原因があるとされ、救済対象を「働けない人」に限定しました。また「劣等処遇の原則」が導入され、救済を受ける人は一般労働者よりも劣悪な条件で処遇されるようになりました。その象徴が「ワークハウス」と呼ばれる施設で、刑罰的な扱いを受けるため「恐怖の家」と呼ばれました。

19世紀後半〜20世紀初頭:社会政策の進展

その後、工場法(1833年)、労災保険(1897年)、失業保険の原型(1906年)、老齢年金法(1908年)、国民保険法(1911年)と、社会政策的立法が次々に整備されました。特に国民保険法では雇用者・被雇用者・政府が共同で拠出する「社会保険方式」が導入され、近代的な社会保障制度の基礎が築かれます。

1942年:ベヴァリッジ報告

第二次世界大戦中に発表された「ベヴァリッジ報告」は、その後の世界に大きな影響を与えました。この報告書は、社会再建を阻む「5つの巨悪」(貧困・病気・無知・不潔・失業)を指摘し、国家が最低限の生活(ナショナルミニマム)を保障するべきだと提案しました。

ここで打ち出されたのは、すべての国民を対象とした包括的な社会保険制度です。均一な最低生活給付、拠出の統一、行政の一元化など、現代の社会保障制度の原則に通じる考え方が示されました。

まとめ:イギリスから始まった近代社会保障

イギリスでは、救貧法から新救貧法、ワークハウスを経て、やがて「国家による最低限の保障」へと進みました。この流れは世界各国に大きな影響を与え、日本の制度設計にも反映されています。

👉 社会福祉士の試験対策としては、エリザベス救貧法 → 新救貧法 → ベヴァリッジ報告 という流れをしっかり押さえることがポイントです。

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