試験対策

2026 年(令和8年)社会福祉士国家試験の法律・統計資料の反映時期と注目すべき改正一覧

社会福祉士国家試験は、出題基準の項目に加えて現行の法令や制度、統計資料、厚生労働白書など公刊物からも出題されます。近年は、法律・制度が年単位で改正され、試験問題も最新の改正点や支援制度を踏まえた事例問題が増えています。ここでは、2026年(令和8年)2月実施予定の第39回国家試験に向けて、把握しておきたい法律改正・制度変更と参考にすべき統計・白書をまとめます。

法律・制度が反映される時期の目安

  • 法律・制度改正:試験問題には、公表・施行済みの法令や制度が反映されます。例年、試験前年の春〜夏に施行された改正や新制度が翌年2月の試験に出題されています。2026年度試験の場合、2024年度末〜2025年春頃までに施行された主な改正が対象となる可能性が高いです。
  • 統計資料・白書:厚生労働白書や国民生活基礎調査などの統計は最新年度のデータが参考にされます。2026年度試験であれば2023〜2024年度統計や令和5〜6年版の厚生労働白書などが想定されます。

2026年試験で注目すべき主な法改正・制度変更

  1. 困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(令和4年法律第64号)
    • 施行時期:2024年4月1日施行。
    • 概要:性暴力や貧困など困難を抱える女性への包括的支援を目的とした新法で、従来の「売春防止法」を実質的に置き換えました。
    • 主要改正点:
      • 都道府県に「女性相談支援センター」を設置し、相談・支援や一時保護を行う。
      • 「女性自立支援施設」を創設し、従来の婦人保護施設に代えて生活自立支援を実施。
      • 関係機関が連携して早期・継続的な支援を行うことを義務付けた。
    • 試験でのポイント:新法制定の趣旨、従来法(売春防止法)との違い、相談支援センターと自立支援施設の役割。
  2. 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)改正(2024年施行)
    • 施行時期:2024年4月1日施行。
    • 主要改正点:
      • 退院後の生活環境相談員の配置対象を医療保護入院者から応急入院・措置入院者にも拡大。
      • 医療保護入院の期間に6か月の上限が設定され、退院促進のための支援が強化された。
      • 家族等の同意が得られない場合、市町村長(区長)の同意で医療保護入院できる旨を明確化。
      • 「精神病質者」を精神障害の定義から除外(2022年改正の確認)。
    • 試験でのポイント:退院後支援体制の強化や入院期間の上限設定など、権利擁護や地域移行を促進する動き。
  3. 生活困窮者自立支援法・生活保護法・社会福祉法改正(2024年法律第21号)
    • 施行時期:2025年4月1日(一部2024年施行)。
    • 主な内容:
      • 住宅支援の強化:自治体による入居から退去までの一貫した住まい支援、見守り支援付き住宅や住宅確保給付金の拡充、不適正な無料・低額宿泊所への規制等。
      • 子どもの貧困対策:生活保護世帯の子どもへの学習・生活支援を法定化し、高校卒業後の自立支援金を支給。
      • 支援機関の連携強化:福祉事務所と自立相談支援機関が協働で個別ケース会議を実施し、支援を計画的に進める仕組みを導入。医療扶助におけるデータ分析や医療適正化も推進。
    • 試験でのポイント:住宅支援の制度拡充や子どもの学習支援の法定化、支援機関連携の仕組み。
  4. 民法の親子法制等の改正・子ども・子育て支援法及び児童手当法の改正(2025年施行予定)
    • 施行時期:2025年4月1日予定。
    • 民法改正:親権者の義務・権利の明確化、監護者指定制度の創設、離婚後の養育費支払いの強制力強化、親子交流の実現など。
    • 子ども・子育て支援法/児童手当法改正:児童手当の対象拡大(高校生まで)、所得制限の撤廃、「子ども未来戦略基金」の創設、児童手当財源に充てる「子ども・子育て支援金」制度の新設など。
    • 試験でのポイント:親子法制の見直しによる子の最善の利益保障、児童手当制度の拡充と新基金の目的。
  5. 児童福祉法等の改正(2022年改正・2024年施行)
    • 施行時期:2024年4月1日(一部2025年まで段階施行)。
    • 主要改正点:
      • 市町村に「こども家庭センター」を設置し、妊産婦から児童期まで切れ目ない相談支援を提供。
      • 妊産婦・乳幼児家庭へのアウトリーチ支援と居場所づくり等の新事業を創設。
      • 障害児支援の区分見直しや児童発達支援センターの機能強化を行う。
      • 一時保護所の居室改善や支援計画の適正化、妊婦自立支援施設の整備など、支援の質向上を図る。
      • こども家庭ソーシャルワーカー制度 の導入、子どもの意見表明と裁判所による一時保護の審査制度の創設など、権利擁護の強化。
    • 試験でのポイント:こども家庭センターの役割、アウトリーチ支援や障害児支援の新制度、児童虐待防止における司法関与の拡充。
  6. 社会福祉法改正による重層的支援体制整備事業(2021年度〜)
    • 施行時期:2021年4月から順次実施。
    • 概要:従来の制度は子ども・高齢者・障害等の縦割りであり複合的な課題に対応できないため、社会福祉法改正により市町村が「重層的支援体制整備事業」を創設。
    • 主要内容:
      • 相談支援事業:生計困難者や孤立する高齢者・障害者などを対象に、途切れない伴走支援を提供。
      • 参加支援事業:居場所づくりやボランティア活動支援など住民の社会参加を促進。
      • 地域づくり支援事業:地域住民・企業・行政が協働し、支え合いの仕組みをつくる。
      • 財源として複数事業を一体的に利用できる包括交付金を創設し、自治体が創意工夫して事業を展開できる。
    • 試験でのポイント:新事業の趣旨、3つの支援事業の内容、地域共生社会の構築に向けた取組み。
  7. 子ども家庭庁の設置とこども基本法(2023年)
    • 施行時期:2023年4月1日。
    • 概要:子ども政策の司令塔として「こども家庭庁」が創設され、子どもの権利を守るためのこども基本法が施行された。
    • 主要内容:
      • 政府全体の子ども施策を総合的に推進するため、内閣府の外局としてこども家庭庁を設置。
      • こども基本法では、子どもの権利尊重・意見表明の機会確保・成長発達のための環境整備など基本理念を掲げ、国や自治体の責務を規定した。
      • こども政策推進会議を設置し、政府の実施状況を監視・評価する仕組みを整えた。
    • 試験でのポイント:こども家庭庁とこども基本法の役割、基本理念、児童福祉法との関係。

統計資料・白書の取り扱い

  • 厚生労働白書:令和5年版または令和6年版。社会保障や福祉施策の最新動向、テーマ別分析。白書には制度改正や高齢者・子育て支援の現状などがまとめられており、事例問題の背景知識として重要。
  • 国民生活基礎調査・福祉行政報告例などの統計資料:生活保護受給世帯数、高齢者の割合、児童虐待件数など、主要指標を押さえておくと、選択肢問題で迷いにくくなる。直近の年度(令和5〜6年)のデータを確認すると良い。

おわりに

社会福祉士国家試験では、出題基準にとどまらず現行法令や最新統計、白書に基づいた問題が増えています。2026年試験に向けては、2024〜2025年に施行・施行予定の法改正(女性支援新法、精神保健福祉法改正、生活困窮者自立支援法等改正、民法・子育て支援法改正、児童福祉法改正など)と、2023〜2024年度の統計資料や白書を重点的に学習することが重要です。具体的な施行日や制度の趣旨・仕組みを理解し、事例問題に対応できるよう備えましょう。

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