社会福祉士と経済のつながり
社会福祉士の仕事は、生活に困難を抱える人を支えることです。ですが、その背景には必ず「経済の動き」があります。
不況になれば失業者や生活困窮者が増え、景気が良くても非正規雇用や格差の拡大といった問題が出てきます。つまり、社会保障制度は経済環境に影響されながら発展してきたのです。
受験勉強でも「制度そのもの」だけでなく「なぜその制度ができたのか」「どんな経済状況が背景にあったのか」を理解することが大切です。これを押さえておくと、暗記だけではなく知識として定着しやすくなります。
戦後からの出発点
1950年(昭和25年)に生活保護法が整備され、1954年(昭和29年)には厚生年金が再スタート。さらに1961年(昭和36年)には国民皆保険と皆年金が実現し、社会保障制度の基盤が固まりました。
ただし当時の日本は戦争で経済が壊滅的な状態にありました。だからこそ「人々の生活を守る仕組み」が必要とされ、社会保障が整えられていったのです。
高度経済成長と社会保障
戦後の復興を経て経済は急速に回復し、1956年には「もはや戦後ではない」と宣言。1968年には日本は世界第2位の経済大国となりました。豊かな成長期にあったため、社会保障費も国民所得の範囲で賄うことができ、制度の持続性は大きな問題にはなりませんでした。
石油ショックと福祉政策
1973年には石油ショックが起こり、同じ年が「福祉元年」と呼ばれます。経済成長が止まり、「福祉と財政の両立」が課題として浮上しました。その後、1980年代には行財政改革が進みましたが、バブル期には再び高齢者福祉の拡充が図られました。
バブル崩壊と「失われた時代」
1990年代初頭のバブル崩壊は日本経済を長期停滞へ追い込み、「失われた10年」、さらに2000年代までを含めて「失われた20年」と呼ばれました。
その間に介護保険制度がスタートしましたが、社会保障費の増大は深刻な問題となり、効率化や抑制策が打ち出されました。一方で、格差や子どもの貧困といった新しい課題も社会に広がりました。
2000年代以降の動き
2008年のリーマンショックを経て、2013年にアベノミクスが始まり、株価やGDPは回復しました。しかし非正規雇用が増え、実質賃金や消費は伸び悩みました。
また、子ども手当(のち児童手当)や待機児童対策などが進められ、「全世代型社会保障」という方向性が示されています。
現代の課題
現在の日本は少子高齢化が急速に進み、「支える人が減り、支えられる人が増える」構造的な問題に直面しています。社会保障費は毎年のように膨らみ、財政とのバランスが大きなテーマです。さらに、所得格差や非正規雇用、子どもの貧困といった課題も深刻化しており、制度の持続可能性と機能強化が同時に求められています。
経済と社会保障をセットで学ぼう
日本の社会保障制度は、戦後の混乱期から高度経済成長、不況や少子高齢化といった経済の変化に応じて発展してきました。
社会福祉士を目指す皆さんは、制度の暗記だけでなく「その背景にある経済の動き」を理解することで、より実践的な学びになります。