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【第4回】 在宅生活を強く望むUさん ~初回の利用~

面接を無事に終え、私は施設職員へ丁寧に情報提供をしました。特に、日常的に関わる介護職員へはUさんの性格傾向や気質、関わり方のポイントなどを重点的に伝えました。

 

帰宅願望というものは、認知症のお年寄りにはよくあるものです。誰でも自分の家が一番落ち着く居心地の良い場所なのです。認知症のない方はショートステイに宿泊することを理解して来ているので帰宅願望が出る方は少ないですが、認知症のある方はそもそも何故自分がこんな場所で夜を明かさなければならないのかが理解できないのです。そのため、帰りたいという気持ちが強まり、身体が自由に動く方は施設外へ出て行ってしまうことも珍しくありません。

 

つまり、不安なのです。ここがどこなのかわからず、知らない人に囲まれて、居心地のいい人などいるわけがありません。Uさんの宿泊を成功させるためには、施設で過ごす時間をUさんにとって居心地の良い安心できるものとする必要があります。そのため、介護職員がどのように関わるかがとても重要となってくるのです。また、周りの利用者さんたちとの関わりも避けられないため、トラブルとならないよう慎重に日程調整をしました。

 

そして遂にUさんの利用当日、送迎には運転手だけでなく私も同乗していきました。すると、Uさんは約束の時間に全く用意ができておらず、起き抜けのパジャマ姿でした。

 

「あらぁ、お約束もなくいきなり出かけましょうと言われても困ります…」と、Uさんは困惑気味です。隣でNさんが少しイライラしながらUさんに語り掛けます。「昨日も言っただろ。出かけるんだよ。」

「Uさんにお薬のご相談をしたい方がいるんです。相談に乗っていただくことはできませんか?」私がそう聞くと、Uさんは「あらぁ、協力したいのはやまやまですがねぇ」と困ったように微笑みます。「とりあえず、どっちにしろ着替えた方が良いのではないですか?」と言うと、「そうね。いつまでもこんな格好しているわけにもいかないわね。」と、着替え始めました。

 

面接のときに会っていることは覚えていないようでしたが、なんとなく私の顔に見覚えがあったのか、私の意見を拒否せずに聞き入れてくれました。

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