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介護事例連載【第4回】Iさんの夢 ~状態の低下~

time 2019/08/01

介護事例連載【第4回】Iさんの夢 ~状態の低下~

日が経つにつれ、Iさんの体力は徐々に徐々に、目に見えるまでに低下してきます。手先を使う活動には参加しますが以前ほど集中が持たず、途中で眠ってしまったり、小さな声で「もういい」と話すようになりました。

 

介助で少しの間立ち上がることは勿論、椅子に座っていることも難しくなりました。入浴は特に身体の負担が大きいと言われていますが、事業所には寝たままで入浴できる設備がなく、スタッフ二人での対応となります。入浴は疲れてしまうのか、その後はベッドで眠ってしまい、しばらく起きられなくなる状態でした。

 

娘さんと主治医に状況を話したところ、「嫌なら活動に参加しなくていいし、風呂に入らなくても死なない。眠たいならずっと寝かしておけばよい」との結論に至りました。

 

私たちとしてはせっかく来所してもらう以上は何かしなければならないという気持ちがありましたが、娘さんさえ問題なければ、そもそも通所する必要があるのかというところまで来ていました。

 

それに伴って各臓器の活動も低下してきていたようで、いつ何が起こってもおかしくないし、それほど先は長くないだろうと主治医より話がありました。いよいよ「看取り」という言葉が現実味を帯びてきます。

 

制度的な話をすると、当時の小規模多機能ホームの運営基準として、「通所を中心として…」「週に4回程度は通所サービスを提供することを…」といった文言がありました。

 

Iさんはもはや通所の必要性がなくなり(できなくなり)、おのずと宿泊も不要となり、訪問しても介護のフィールドでは清拭と環境整備ぐらいしかできることがなくなっていました。

 

運営基準を真に受けると、小規模多機能ホームの対象ではなくなっていたのです。具体的な話をすると、居宅介護支援事業者(○○ケアプランセンター等と言われるところです)にケアマネージャーを交代し、訪問入浴や訪問看護等、自宅での介助、医療のサービスを密にすることが求められているのではないかという状態でした。

 

実質サービスをお断りすることになるため、言葉を選びながら娘さんにそのことを伝えました。「家での世話は私がするし、訪問ってことにして、適当に母ちゃんに話しかけて帰ってくれるだけでいい。役所が何か言って来たら私が追い返してやるから、今さらそんな薄情なこと言わないで。最期まで看てあげてよ」

 

いつも冗談ばかり言っている娘さんがしっかりと私の目を見据え、真剣な表情でそう言いました。ご家族の希望とは言え、ルール上は非常にグレーなやり方です。しかし、その言葉にハッと目が覚めたような感覚になり、思わず「分かりました、私たちにやらせて下さい」と答えていました。

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