Majiriki

福祉、介護職、介護を頑張る人のトータルサポートサイト 社会福祉士 介護福祉士 精神保健福祉士 保育士

介護事例連載【第5回】住み慣れた家と認知症のGさん ~新居~

time 2019/05/09

介護事例連載【第5回】住み慣れた家と認知症のGさん ~新居~

混乱を隠せないGさんをよそに、まだモタモタしているのかと言わんばかりにお嫁さんが様子を見に来ます。環境が大きく変わったので、まだ周りの状況が理解できていないのかもしれないことを伝えると、Gさんは昔から適応能力が高かったこと、非常に頭が良く、様々な学問に精通していたこと等を立て板に水で教えてくれました。

 

Gさんのご家族は勉強はできるようでしたが、認知症に対する理解は今一つで、あれだけ頭の良かった人なのだから、それぐらいは分かる、できるだろうと信じて疑いませんでした。

 

実際、過去のスキルや頭の良さと言ったものは認知症になっても残存していることが多いのですが、新しい出来事に対する理解や適応、記憶は苦手になる方が多く、その辺りの特徴に納得がいかなかったようです。

 

ショッキングな出来事と急激な環境変化。基本的な能力があればそれに対応し、乗り越えられる問題なのかもしれませんが、根本的に何かが違う。それを説明する気も起こらず、「私自身が不慣れなもので、お待たせしました」と伝え、Gさんの着替えを手伝った後、一緒に自宅を出ました。

 

ここは新しいGさんの家。それは紛れもない事実ですが、昔の家を改築したことをGさんは理解できていませんでした。送迎車に案内すると、「そう、ここに私の家があったんですけど…。あれ、私どこから出てきたのかしら」

 

周囲の環境は昔から何も変わっていないのに、Gさんの家だけがやたら新しくスペシャルに変わっている。普通なら気分が高揚したり優越感に浸ったりするところですが、肝心の本人だけが置いてきぼりになっていました。

 

送迎者の中でもぼんやりと外を眺め、物憂げな表情で時折首をかしげていました。色々と言いたいこと、聞きたいことがあったのでしょうが、ぐっと気持ちを押し殺していたのでしょう。通常であれば新しい自宅の話題で持ちきりになるであろうところ、かける言葉が見つかりませんでした。

 

Gさんは新しいことほとんど記憶できない状態になっていましたが、おぼろげながら何か大きくショックを受ける出来事があったということは頭に残っていたようです。今まで以上に人の輪から離れるようになり、集団の中にいても寂し気な表情でぼんやりと過ごすようになりました。

 

親御さんが不自由や危険を感じないように大枚をはたいて自宅を改築し、息子夫婦に面倒を見てもらえる。これ以上に幸せなことはないように聞こえますが、残念ながらGさんがそれを喜んでいるようには見えませんでした。

sponsored link

down

コメントする






sponsored link