Majiriki

福祉、介護職、介護を頑張る人のトータルサポートサイト 社会福祉士 介護福祉士 精神保健福祉士 保育士

【第7回】仕事が生き甲斐だった元国家公務員のAさん ~本当に退職~

time 2019/03/02

【第7回】仕事が生き甲斐だった元国家公務員のAさん ~本当に退職~

登庁イベントの後もA さんは特に変わりなく生活しており、そのことも忘れてしまっているのかと思うほどでした。しかし、庁を発つ前のあの言葉は紛れもなく本人の口から出たものなのです。

 

ある日、Aさんは風邪をひき、それをこじらせて肺炎になってしまいました。他の検査数値も思わしくないとのことで、訪問診療医の紹介で大きな病院にて検査を受けたところ、多臓器不全との診断。

 

治療等でどうこうできる状態ではなく、衰弱してくれば対象療法的に延命処置をするかしないかの問題で、いつ最期を迎えてもおかしくない状態でした。

 

療養病院への転院という選択肢が浮上しましたが、奥さんの「治療や延命は望まないので、施設の皆で看取ってあげてほしい」との強い意向があり、最期までお世話をすることになりました。

 

A さんは完全な寝たきりになり、会話もままならなくなりました。食事や水分もほとんどとらなくなり、ほとんど居室で寝ている状態です。

 

意地悪だけど世話好きな入居者が部屋を訪れ、「コラ!ハゲ!しっかりせんか!」などと声をかけます。A さんは静かに頷きます。

 

とても寒い時期でした。奥さん、他の入居者、私たちスタッフに見守られ、A さんは「人生」という仕事の退職を迎えました

 

ご遺体はお気に入りのスーツを着こなし、トレードマークの黒縁メガネ・バーコード頭も忘れていませんでした。

 

「入居者の通夜葬儀に他の入居者は勿論、ホームのスタッフも参列しない」との社内慣習があったのですが、Aさんに関してはそれが打ち破られました。スタッフ・Aさんと親しくしていた入居者で近くの会館に出向き、通夜葬儀に参列することになりました。

 

大きなホールに官公庁からの豪華な供花が並び、偉そうなお役人が多数押し寄せと思っていましたが、収容人数20人程度の小さな式場に、親族一同とホームの運営会社からの供花が1対ずつ。参列者は私たちを除けば、奥さんと数人の年配の男女でした。

 

少し予想外で寂しい気もしましたが、規模が大きければ良いというものではありませんし、奥さんの意向でそうしたのかもしれません。

 

ただ、バリバリの仕事人だったとは思えない場だったからこそ、Aさんが本当にそこから解放されたような気がしました。また、自意識過剰かもしれませんが、私たちが家族のような存在として見送ることができたのではないかと感じました。

 

「あのハゲオヤジ、嫁さんを悲しませてからに・・・」「仕切り屋がいなくなったら、次は誰がやるんだい」等、口々に毒のある、そして愛のある弔辞。

 

特定の入居者に強い想いを寄せるのは好ましくないと言われていますが、未熟だった私が精一杯に関わったAさん。天国でも新しい仕事に追われているのかなと、少し気の毒なような、Aさんらしいような。

 

関連記事:【第6回】仕事が生き甲斐だった元国家公務員のAさん

sponsored link

down

コメントする






sponsored link