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【第5回】仕事が生き甲斐だった元国家公務員のAさん ~A さんのいないフロア~

time 2019/02/28

【第5回】仕事が生き甲斐だった元国家公務員のAさん ~A さんのいないフロア~

病院からの帰りの車内で上司が「俺たちの仕事は楽しいこと・心温まることばかりじゃない。Aさんが身を持って勉強する機会を与えてくれたんだ」と話しました。私は他施設での勤務経験があったので、そんなことは十分に分かっているつもりでした。

 

「甘く見るなよ!」と内心で反発しながらも、Aさんに関してはその言葉を素直に受け入れている自分がいました。

 

今思えば、本人・他者の身を守るための適正な手段だったのでしょう。また、それを否定することは医療機関における治療を否定することにも繋がり得ます。

 

しかし、その時の私はそれが善なのか悪なのかの二元論でしか考えられず、複雑な心境でした。

 

同じフロアの入居者やそのご家族から「Aさんはどうしたのか」といったことを聞かれるようになりました。上司からは体調不良で入院していると答えるよう言われていたのでそのように対応しますが、まだまだ未熟だった私の表情は動揺を隠せていなかったことでしょう。

 

A さんが入院しているにも関わらず時折奥さんがホームに訪れ、菓子折りなどを置いて帰ってくれました。

 

以前は綺麗に化粧し、上品だった奥さんが見るたびにやつれていきます。A さんの行動と、その結果が相当ショックだったようです。

 

お心付けは受け取らないようにとの決まりでしたが、ホームに通うこと、それらを受け取ってもらうことが奥さんの心の拠り所になるのならと、特例的に受け取ることになりました。

 

約1ヶ月後、症状が安定して退院調整に入っているので、そちらも受け入れ準備をしておくようにと病院から連絡が入ります。先方からの情報に基づいて、ミーティングでAさんがホームに戻ってからのケア方法等について話し合います。

 

怪我をした女性は意外とケロっとしており退院を喜んでいましたが、他のスタッフは複雑な心境を隠しきれていません。上司は何度か病院と電話でやりとりしていたようですが、実際にAさんの状態を見た者は誰もいません。

 

あれほどの事態になったのですから、書面や口頭の情報だけでは不安を覚えるのは仕方がありません。「本当に大丈夫なのか」「戻って来なくてもよいのに」と胸中を打ち明けるスタッフもいました。

 

確かにAさんが変貌を遂げている最中はあれこれと手がかかったため、私もAさん一人いないだけで仕事が随分楽になったと感じていた部分がありました。

 

しかし、いざ退院となるとあっという間にAさんはホームに戻ってくることになりました。

 

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