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介護事例連載【第4回】このままで良いHさん ~Hさんとの対面~

time 2019/05/06

介護事例連載【第4回】このままで良いHさん ~Hさんとの対面~

地域包括支援センター内に入った瞬間、鼻をつく悪臭が漂っていました。汗をかき、乾くというルーティーンを繰り返したTシャツ、小便をかけられ続けたアスファルト、牛乳を拭いた後の乾いた雑巾。身近な例でいえばその辺りのジャンルで、それを何十倍にも増幅させたような臭い。文章でうまく伝えられないのが、何ともどかしいことか。

 

HさんはAさんと話をしながら面談室で待機していました。人間は臭気には早い段階で順応すると言われていますが、ここではセオリーが通じませんでした。努めて平静を装い、名刺を渡して挨拶します。

 

「兄さんも皆に呼ばれてきたんかね。やはり、私は無様に見えるかね?」開口一番、Hさんは穏やかな口調でそう話しました。非常に鋭い眼光で、思わず一瞬目を逸らしてしまいました。

 

差し障りのない答えでお茶を濁しましたが、「無様というよりも臭い」というのが何よりの本音でした。

 

「年寄りの集会所に顔を出しなさいってAさんがしつこくてね。んで、そこの兄さんが契約書を持ってくるからサインをして今後は面倒を見てもらってくれと。私はこのままでいいんだけど、それで兄さんのメンツが立つのなら協力するよ」彼女は自身の状況を理解しているどころか、こちらの思惑は完全に見透かされている。そんな気がしました。

 

急きょ契約書の説明に入りますが、Hさんはほとんど説明を聞いません。ペラペラとページをめくり、風貌からは想像できないような達筆で次々に署名欄を埋めていきます。ハンコは持っていないとのことで、傍らにあった朱肉にワイルドに指を押し付け、契約書に拇印をついていきます。本来であればオレンジのような色が映るはずなのですが、指に汚れが蓄積されているのか、赤黒い指紋が残っていました。

 

一応、週に4回は来所してほしいことを伝えますが、色々と忙しいので頻繁に行けないとのことでした。一方、Hさんが家にいて、かつその気になれば行くかもしれないとも話しました。彼女にしてみれば、私たちが気乗りしない飲み会に「行けたら行く」と適当に答えるような感覚なのでしょう。

 

Hさんの自宅周囲は一方通行が多く、車で迎えに行くには大きく迂回する必要がありました。加えて交通量が多いうえに駐車できるスペースがなく、送迎の難所と呼ばれる地域でした。時間的には事業所から自転車で7~8分、歩いて10分~15分程度の場所にあり、苦にならないのであれば自転車か徒歩で行く方が無難です。当面は通所のお迎えを兼ねた安否確認+訪問からスタートすることになりました。

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