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介護事例連載【第6回】Fさんの娘との闘い ~アホ~

time 2019/04/30

介護事例連載【第6回】Fさんの娘との闘い ~アホ~

入退院というトラブルにも負けず、Fさんは以前の調子を取り戻しました。ほとんど毎日を穏やかに過ごせるようになっていましたが、娘さんは相変わらずの状態です。

 

私を含めスタッフの間に「何とかしてアイツ(娘さん)をアッと言わせたい」という思いが日に日に強くなっていきます。本来のあるべき姿とは完全にかけ離れていますが、皆本気でそう思っていました。

 

通常、ご家族が本人の様子を見るのはせいぜい面会中ぐらいのもので、1日の大部分を知るのはスタッフです。写真は一瞬の様子だけで継続した状態を伝えるのは難しいですし、文章であれば何とでも書くことができます。

 

フロアに映像に長けたスタッフがおり、日頃の良い時の様子を動画ダイジェストにして、DVDで娘さんに渡してはどうかとの意見が出ました。編集はどうするのか、機材はどうするのかとのツッコミが入りましたが、そのスタッフは躊躇なく「自腹でもいいのでやりましょうよ。悔しいじゃないですか」と。

 

最初は家族へのビデオレターというコンセプトで製作を開始したのですが、Fさんが話せないことを分かった上でさせるのは言語道断ですし、カメラを向けると顔を赤らめてどこかに行ってしまいます。本人の負担になっては意味がありませんし、できる限りビデオを回し続け、良い場面だけピックアップして編集することになりました。しかし、ここで反対意見が出ます。良いことも悪いことも含めて伝えよう。

 

反対を唱える者はいませんでした。楽しそうに過ごしている時は勿論、辛そうにサプリメントを飲んでいる時、居場所がなくなると彷徨い歩く時も含めたドキュメントを作る。

 

撮影は断片的に、数日にわたって行われました。ある日、お調子者のスタッフがFさんにちょっかいをかけていた時のことです。Fさんがそのスタッフを軽く小突き、笑いながら「アホ」と言ったのです。

 

「うおーー!」というスタッフの大声(雑音)まで拾っていましたが、確実にFさんの「アホ」は映像、音声に収められていました。そう言われて喜ぶのはお笑い芸人ぐらいだと思っていましたが、値千金の「アホ」が出たのです。

 

編集スタッフが動画をDVD化して、Fさんのドキュメントが完成しました。娘さんの面会時にそれを渡し、是非感想を聞かせてほしいと申し添えます。娘さんは怪訝そうにそれを受け取り、帰宅しました。有り得ないほど不純な動機でしたが、何かが変わると皆が根拠なく確信しました。

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