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【第7回】紙と鉛筆と認知症のCさん ~衰えを受け入れる~

time 2019/03/16

【第7回】紙と鉛筆と認知症のCさん ~衰えを受け入れる~

他部署や外部からも「〇夫の部屋」は大好評だったようで、バザー後の打ち上げはCさんの話で持ちきりでした。私たちはその功績をまるで自分たちの手柄のように語り、喜びました。

 

次の日の朝も興奮冷めやらぬスタッフから「すごかったですね!」と称賛されます。Cさんは何を褒められているのか全く分からない様子ですが、まんざらでもないという表情です。

 

バザーという目標を失ってCさんが意気消沈しないかと懸念していましたが、そもそもそのことを覚えていなかったようです。

 

その後も毎日Cさんは絵を描き続けましたが、段々と線が粗くなり、途中で辞めて眠ってしまうことも増えてきました。認知症以外に特段の健康上の問題はありませんでしたが、老いは着々と進行していました。

 

いよいよCさんは寝たきりになり、紙と鉛筆を持って絵を描くことはなくなりました。しかし時折、ベッドで横になり、目を閉じたまま空中で手を動かして何かを描くような動きをよくしていました。

 

気の毒な話に聞こえるかもしれませんが、何もなくても、気持ちで描いても、それがCさんの画法であり、作品ができ上がっていたのでしょう。

 

Cさんにおいては絵を描くということが功を奏して状況が好転したケースですが、今までの生きてきた過程や趣味・嗜好等を知り、とりあえずそれに近いことを勧めれば喜んでくれるだろうという安直な考えが蔓延っているのも事実です。

 

高齢者介護においては、爆発的に盛り上がることはあっても、それが数ヶ月・数年に渡って続くことは少なく、一過性のものになることの方が多いと言えます。現状維持できれば御の字で、どこかのタイミングで下降していくのを受け入れ、見届けなければならない立場にあります。

 

「昨日まで元気だった人が、今日はいない」これは私たちも同じですが、高齢者の場合は特にその可能性が高い状況にあります。

 

それはマイナス側面であると同時に、残された時間をいかにして有意義なものにできるかを模索し、実現できる立場でもあるということです。

 

介護職とは、押し付けにならない程度に過去・現在にスポットライトを当て、最後になるかもしれない花道を飾る仕事とも言えるかもしれません。

 

C画伯は喜んでくれたのか、満足してくれたのか、はたまた私たちの押し付けだったのか、答えは誰にも分かりません。

 

仕事用のペンがなくなったため、文具コーナーに立ち寄りました。埃をかぶった「トンボ鉛筆」を見かけ、ふとCさんを思い出します。

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