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【第6回】紙と鉛筆と認知症のCさん ~C画伯~

time 2019/03/15

【第6回】紙と鉛筆と認知症のCさん ~C画伯~

バザー当日。天候に恵まれ、息子さんも仕事を調整して駆けつけてくれました。Cさんには漫画家のようなベレー帽をかぶってもらい、「〇夫の部屋」の似顔絵ブースに座ってもらいます。

 

環境変化で混乱しないだろうか・そもそも似顔絵を描いてくれるだろうかと心配が募り、傍らで見守る息子さんも緊張の面持ちでしたが、肝心のCさんはウトウトと居眠りしていました。ベレー帽はだんだんとずり落ちて行きます。

 

とあるご婦人が「私を描いてもらえるかしら」とCさんに声をかけます。おもむろに顔を上げ、睨みつけるようにご婦人の顔を凝視します。私たちは元のCさんの姿を知っているので、緊張感が走ります。「もう一度、お願いできますか?」とCさんが話したため、慌ててフォローを入れます。

 

その後、特に返事をすることもなく、Cさんは鉛筆と画用紙を手に取ります。後ろで見守っている息子さんは何も言いませんが、「おお…」といった表情で画用紙に描かれるご婦人を見ています。

 

彼女は「おじいさんが頑張っているのね」程度で声をかけたのでしょう。ゆっくりとしたペースに少し持て余してきた様子でしたが、完成した絵を見て驚愕していました。あまりにもオーバーなリアクションだったため、人が集まってきます。多くの来客が「〇夫の部屋」で足を止めます。

 

似顔絵は1枚500円の予定でしたが、ご婦人はテカテカのピンク色の財布から1万円を出しました。さすがにまずいだろうと、息子さんが丁重にお断りし、500円玉を受け取ってCさんに渡します。

 

Cさんが「疲れた…」と席を立ったため、居宅に案内します。その手には500円玉を強く握りしめられていました。ベッドでゴロンと横になり、「ふあ~~!」と大きなあくびを一つ。満足そうな表情でした。

 

似顔絵コーナーはあっという間に閉店してしまいましたが、先程のご婦人がドヤ顔で「○夫の部屋」の宣伝をしてくれました。

 

当日の目玉商品は力士の生手形とサイン・湯呑セットだったのですが、Cさんの絵に注目を奪われ、まさに土俵際の状態でした。

 

この手のことをやると大抵「認知症の人が仕上げた割には上手だ」という補正が入ることが多いのですが、芸術に造詣が深い人の意見はいざ知らず、Cさんの絵は純粋に上手いと感じられました。

 

バザーが終わりました。Cさんは既に居室で眠っていましたが、息子さんが後片付けを手伝ってくれました。「形は違えど、父の「個展を開き、絵で稼ぐ」という夢を叶えてもらった。本人の頭さえしっかりしていればもっとよかったんだけどね」と少し目に涙を浮かべながら、少し寂しそうに、嬉しそうに話しました。

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