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【第4回】紙と鉛筆と認知症のCさん ~Cさんの絵~

time 2019/03/13

【第4回】紙と鉛筆と認知症のCさん ~Cさんの絵~

早速Cさんに鉛筆とスケッチブックを渡したところ、「トンボ鉛筆か…」と呟き、少し表情が緩んだ気がしました。「向かいの席で居眠りしている女性を描いてもらえませんか」とお願いしてみます。返事はなく、少し怪訝そうにしていましたが、サラサラと線を描き始めました。

 

初めての出来事に最初はワクワクしましたが、時間がかかりそうだったので、他の仕事をしながら様子を見ていました。

 

手を止め一息ついた様子だったため、見に行きました。スケッチブックの中に、誰が見ても「向かいの席で居眠りしている女性」と分かる人がいました。正直、出来栄えは期待しておらず、Cさんが少しでも落ち着くのなら良い時間稼ぎになる程度にしか思っていなかったので、心底驚きました。他の職員も集まり、大盛り上がりしました。Cさんはにこやかに、「喜んで頂けてよかったです」と話し、居室に戻ってゴロンと横になりました。

 

何かテーマがあった方が描きやすいのではないかと、富士山や葛飾北斎・モナリザ等、誰でも知っているようなモデル画を渡しましたが、興味を示しませんでした。自分の描きたい物を描くというポリシーでしょうか。

 

それ以降、Cさんは手元に鉛筆と紙さえあれば、誰に言われるでもなく絵を描きました。チャップリンやマッカーサー、鉄腕アトムにのらくろ、軍艦に戦車…。時間はかかりますが、見事な作品が次々と完成していきます。

 

右下には必ずイニシャルのサインと西暦・日付が入っていました。西暦はバラバラで、1930年代~1990年代がメインでした。先ほどの作品の他に、時折誰か分からない女性や田舎・商店街の風景も混じっていました。

 

Cさんに絵の内容について尋ねますが、いつも思ったような答えが得られません。諦め半分、あれこれ干渉せずに世界観を尊重することにしました。

 

対応が奏功しているのは事実でしたが、何も考えずにただ鉛筆と紙を渡しておけばよいという、あまり好ましくない構図ができ上がってしまいました。Cさんと絵の在り方について、職員間で話し合うことになりました。

 

Cさんに目標意識をもってもらうために、3ケ月後に控えた秋のバザーで何かできないかとの意見が出ました。完成した絵を売ったらどうか・似顔絵ブースを設けてはどうか等、様々な意見が出ます。

 

さすがに売ってしまうのはどうなのか・そもそも目標や意図を理解できるのか・体力的に大丈夫かといった問題もありましたが、最終的には完成した作品の個展風掲示・Cさんによる似顔絵ブース設置が採用されました。

 

個展名は某女性大物司会者の番組にちなんで「〇夫(Cさんの名前)の部屋」とし、似顔絵は1枚500円で販売、期限はCさんが疲れるまで。

 

お金が絡む話になるため本人と息子さんにも相談したところ、Cさんは「ああ、やりましょうか」と気のない返事でしたが、息子さんはとても喜んで下さり、強く後押ししてくれました。

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