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【第4回】 在宅生活不可能となり緊急入所したご夫妻 ~外出という提案~

娘さんが怒って出て行ってしまった日から数日後、私は担当ケアマネージャーへある提案をしました。TさんとSさんに外出という形で家に帰っていただくのはどうか?というものです。それを何度か繰り返し、可能であれば一泊でも家で過ごしていただくのが良いと思ったのです。しかし、ケアマネージャーは微妙な反応でした。今の身体状態で家に一泊なんてできるのだろうか?という思いが強かったようです。家にいる間に転倒したり二人では対処できないことが起こった場合に、誰が駆けつけることができるのかという懸念もありました。

 

しかし、Tさんの希望があくまで在宅生活である以上は、出来る限りその思いに沿った道を探るのが支援者のすべきことであると思います。何より、今は自宅へ帰りたいという思いが強すぎて入所のことを考えることが出来ていません。そのTさんの気持ちに寄り添うことが何より優先されるべきと思ったため、このような提案をしたのです。娘さんにも付き添っていただければ、短時間自宅に滞在すること自体は問題ないだろうと思われました。

 

最初は難色を示したケアマネージャーも、私の話を聞いて最終的に納得してくれました。「確かに、今の状態で入所先をと言っても難しいですものね。Tさんの気持ちに添って支援計画を立てるなら、そういうことが必要なのかもしれません。」

 

そして娘さんにも同意いただき、一週間後に外出が実現しました。最初は3時間程度の滞在でしたが、ご夫妻は久しぶりの帰宅にとても嬉しそうでした。娘さんも少し心配そうな顔をしながら一緒に出掛けていきました。

 

帰ってきてからお話を聞くと、「とりあえず、ただただ嬉しそうでした。」と娘さんが教えてくれました。Tさんも、「やっぱり自分の家は落ち着くね。」とニコニコしていました。自宅にいる間はトイレへ行かず、ソファに座ってあまり動かなかったようです。そのためご本人も不安や危険を感じることはなかったようでした。Sさんも自宅へ帰ったことで「くつろいじゃったわぁ」とご機嫌でした。

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