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【第4回】妻のネグレクトにより寝たきり状態であったHさん ~本来のHさん~

Hさんのショートステイ二日目に、レクリエーションに誘いました。正直言って、お断りされてしまうかなとも思っていました。周りの人と一緒にゲームで盛り上がる姿は想像できなかったからです。しかし、その予想は見事に裏切られました。

 

風船ボールリレーというものを行いました。利用者の方に一列に並んでもらい、風船を両手で持って上にあげたまま後ろの人にリレーしていくゲームです。途中で落としてしまわないように声をかけながら運びます。Hさんをお誘いすると、少しはにかんだ表情で「できるかね。」と笑いながら参加の意思を示してくれました。

私はその反応に少し驚きましたがとても嬉しく、他利用者の輪に入ってゲームを楽しむHさんを見て、「家での表情とは全く違う。別人のようだ」と感じました。

その日はケアマネMさんも初めてのショートステイの様子を見にいらしていました。私と同様にとても驚いていました。「Hさんとは1年のお付き合いになりますけど、こんなに楽しそうな表情を見たのは初めてです。お誘いすれば、こういうことにも参加していただけるんですね。やりたくないわけではないのですね。」と感動していました。

 

Hさんのような方は、積極的にデイサービスやショートステイを利用していった方が良いと考えます。高齢になると、どうしても家に閉じこもりがちになってしまいます。若い頃のように身体がきかなくなったり、親しくしていた友人が逝去してしまったり、積極的に外へ出る理由がどんどんなくなってしまうからです。しかし、閉じこもる生活を続けていれば当然身体はどんどん動かなくなってしまいます。精神的に落ち込んでしまう方もいるでしょう。

 

Hさんは、一日のほとんどをベッドの上で過ごしており歩行状態も不安定で、何日も入浴をしないことで清潔が保たれていなかったために、要介護3という認定が下りていました。そのため、訪問入浴サービスを利用し始めたということでした。しかし、ショートステイでの様子を見て、これが本来のHさんの姿だと思いました。今認定を受け直せば、おそらく介護度は要介護1くらいまで回復するでしょう。入浴や歩行には安全のため付き添いが必要でしたが、身体介護というほどの介助は必要としませんでした。つまり、家族がもっと入浴を勧めたり積極的な声かけや生活動作の促しをしていれば、寝たきり状態の生活にはなっていなかった可能性があるのです。

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