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【第4回】温かい雰囲気の中で死を迎えることを選んだYさん ~高齢者にとって食事とは~

高齢者にとって入院というものは大きく状態を変化させる要因となります。骨折を治すために数か月入院したことで、骨折自体は治癒できたものの、筋力低下から歩けなくなってしまうということは往々にしてあります。そして、それと同様に入院生活が単調であるがために認知症が進行してしまったり、それまで認知症状がなかった方に突然症状が現れるということもよくあることです。

 

身体的にも認知面でも入院前の状態とは大きく変わっているだろうな、と思いました。そして、こうしている間にもYさんの状態は刻一刻と変化しているのでしょう。

 

病院での生活がマイナスばかりというわけではありません。しかし、病院は『治療の場』であるという特性上、どうしても身体機能や認知機能の維持というところまで手が回りません。結果として高齢者はどうしても状態を落としてしまうことになるのです。

 

人間にとって食事というものは、栄養補給という目的以上に様々な面で重要なことであると私は考えています。約5年間に亘る施設勤務の中で、口からものを食べることがいかに認知症の進行に大きな影響を及ぼすかということを目の当たりにしてきました。口から食事がとれず点滴や胃ろう・経管栄養により栄養をとるようになった方々は、たいてい認知症が進行します。生きるために必要な栄養は十分に補給されているにもかかわらず、です。それに加えて入院生活を数か月も続けているのであれば、おそらくYさんはもう自分の意思を伝えることはできない状態なのではないか、と私は考えていました。

 

 あまり時間をかけてはいられない。そう思いました。今はまだ家族の意向が固まっていないからこちらが動くことはできないけれど、家族が入所の意思を固めたときにはすぐ動けるように準備をしておくことにしました。その頃、タイミング良く空室が出たところでした。次の入所者の話をすぐには進めず、Yさんが入所希望を出したときに入れる状態で様子を見ることにしました。

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