その他

【第6回】 特養から自宅復帰を果たしたKさんとそのご主人 ~少女のような笑顔~

それからさらに半年が過ぎました。ご主人は一週間に1度は面会に来てKさんとの時間を大切にしているように見えました。ケンカをしている様子を見ることもしばしばありましたが、Kさんの状態もやっと少しずつ落ち着いてきたように思えた頃でした。

 

ある日、Kさんがこんなことを話してくれました。「あのね、今家に帰れるように準備をしてくれているんだって。」そう語るKさんは少女のように嬉しそうな笑顔でした。「えっ、それどういうことですか?」と問い直しましたが、「ふふふ。」と笑い、答えてくれませんでした。

ご主人と何か話が進んだのかな、と思いましたがそれ以上は聞きませんでした。

 

数日後、相談員を通じてご主人よりこのような話がありました。「実は今、家の改築工事をしているんです。私はどうにかこのままこちらでお世話になっていてほしいと思っていたのですが、家内は時間が経っても依然として家に帰りたいという思いが消えないようで。私も鬼じゃありませんからね、自宅でもう一度2人で暮らすためにはどうしたらいいのかということを以前お世話になっていたケアマネさんに相談したんですよ。以前は私、頑張りすぎていた気がするんです。ヘルパーさんなんて使ったことがないし、ショートステイは用事があるときだけ使ったこともあるけど、それ以外は自分がいるのだから自分でやらなければと思っていました。でも、私の身体にも無理がきて、結果的に強引に施設に入れるという方法になってしまいました。だから、もう一度2人で自宅での生活をするために、どんなサービスが使えるのかを検討しました。私もできる範囲で無理をしないことにしました。そうしたら、まだ在宅でも暮らせる身体状況だと思いますよってケアマネさんも言ってくれて。だから、今家の中をバリアフリーにして玄関前にもスロープと手すりを付ける工事をしているんです。」

-その他
-